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地球交響曲第五番

地球交響曲第五番を上映しているというので、行ってみた。前売り券を買いそびれてしまったせいで、当日券の列に並ぶ。前売り優先という主催者の意向だったので難しそうだったが、なんとか首尾よくすべりこむことができた。

時間になってもはじまらないと思っていると、龍村仁監督が出てきて、ちょっとしたご挨拶。かざらない人柄と服装。地球交響曲のこれまでの4作品はすべて見ているが、5番はちょっとした「同窓会」の趣もあり、89年に作り始めたというこのシリーズの「とき」の流れと「人」の輪を感じさせる。

今回の登場人物は、西表島で伝統の染色を復活させた石垣昭子さん、ブタペストクラブのアーヴィン・ラズロー博士、
自然なお産ができる「お産の家」を作った産婦人科医の大野明子さん。地球科学の研究者としてのキャリアを捨て、医者になったという。

他に、元宇宙飛行士のラッセル・シュワイカート氏とナンシー夫人、ガイア理論の提唱者であるジェームズ・ラブロック夫妻、ダライ・ラマ法王、心を病んだ人を受け入れる森のイスキア主宰の佐藤初女さん、野生チンパンジー研究家のジェーン・グドール女史、版画家の名嘉睦稔さん、トマトの大木を作った故野澤重雄さんとそのご子息。グランブルーの故ジャック・マイヨール氏、アラスカの動物写真家だった故星野道夫さんが、画面に登場。

出演者一人ひとりが本当に魅力的ですばらしい。分野は違っても、それぞれが輝いて生きているのがわかる。そして、うれしいことに、私は彼らが発する何かを頭でなく心でとらえることができたような気がしている。

「情報は時空を超えて、決して消え去ることはない」というラズロー博士の言葉。

この数日、私は頭痛と肩こりに悩まされ、どうにも調子が悪かった。ちょうど、ロシアの学校で人質事件が起こっていた3日間だ。情報がここまで伝わってきたのだろうか、あるいはシンクロしていたんだろうか、などと考えてしまう。当事者の痛みは想像することすらできない。ニュースを見た人たちの心の痛みはそれぞれに違うだろうが、少しはわかりあえるだろうか。本当に痛ましくて痛い。なぜこんなことを人間ができるのか。

そんな痛みに、映画の中のダライ・ラマの言葉がしみる。

「苦しみが慈悲の心を育てるんです」
「悲惨なニュースはすぐにニュースになって、思いやりのあることはニュースになりません。これは、悲惨なニュースは心に衝撃を与えるからです。思いやりはあたりまえのことだから、ニュースにならないのです。われわれは、思いやり(Compassion) があたりまえの社会に生きているのです。思いやりの心を深めていきましょう」

ノーベル賞を受賞された小柴先生が、ダライ・ラマに向かって言う。
「ダライ・ラマのようなお方でも、ビン・ラディンとお話が通じるとは思えないですが」と。

いつも仏像を携えている人と、銃を携えている人と。
鎧兜をとって、ゼロになったら話せるのかもしれないけれど、鎧兜が皮膚の一部になってしまっているような人はけっこうたくさんいる。ビン・ラディンになってはいなくても、仮面をかぶって普通の生活をしている人は少なくないだろう。それは自然にはがれるときがくるのだろうか。かさぶたのように、ぽろりととれる日がくるといいと思う。

ラッセル・シュワイカート氏とナンシー夫人が広島をおとずれるシーンがある。「サダコの折鶴」の前でたたずむ二人。ナンシー夫人の言葉がまたしみる。

「13万人という死者の数を想うより、サダコというたった一人の少女の希望や悲しみに寄り添うほうがすべての生命を思いやることに繋がると私は思います」

回り道はするけれど、紆余曲折はあるけれど、それでも、私たちは全体としてよき方向へ向かっているのだと信じたい。

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