« October 2004 | Main | December 2004 »

大きな買い物

小さな部屋を購入した。部屋は小さくても大きな買い物だ。
駅から二分という好立地。しかも戦災にもあわなかった幸運な場所で、下町の風情が残り、なにやら楽しげ。明治時代の建物のまま営まれているお店もある。こんなところがまだ東京に残っていた。ここからたくさんいいことが生まれそうな嬉しい予感をもっての決断。

初めてのローン。借金など生まれて初めてのこと。普通なら私のような立場ではローンは難しいが、NPOの「勤続3年」の実績のおかげで貸してくれる銀行がひとつだけあった。この銀行を、これからはメインバンクに変えよう。初体験の嵐で、かなり消耗。決断に自信が持てなくなるときがあった。そのたびに、いま「屈葬」のようにして入っている小さなバスタブを思い起こし、足を伸ばしてのびのびとお風呂にはいっている自分の姿を思い浮かべて、力を奮い起こす。

大きなお買い物にしては、あっというまに購入。たまたま賃貸の更新時期で、また更新料を払わないといけないなあと思っていた。熱心な営業マンに出会って、背中を押してもらった。若い会社で、営業マンもみんな若くて親切。こういう会社が伸びていけるような国であってほしい。

理想を言えばきりがないが、今の自分にはベストチョイス。我慢して酔っ払いとともに乗っていた満員電車ともおさらばできる。かつて文豪がそぞろ歩いたあたりをのんびりお散歩もできる。上野公園まで歩いていける。三面鏡の洗面台。洗濯機君も吹きさらしのベランダから室内に入れてあげられる。

今よりもほんの少しよくなったら、それでいい。もしもかなりよくなったりしたら、すばらしいことだ。
いい仕事をするためのまずは地盤固め。恵まれた人間関係にも感謝。

新しいところで、新しい未来を創る。なんと心楽しいことだろう。きっとたくさんいいことがありそうだ。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

新潟の温泉

新潟の温泉など観光業が経営困難に陥っているという。
被害にあったのは新潟県の一部なのだが、新潟県すべてが危険なように思われて、観光客がぱったりと減ってしまったそうだ。新幹線も復旧していないから、東京からちょっと足を伸ばしてというのも難しい。

先週、新潟上越地震の被災地にお見舞いにいってこられた三好一美さんの話。新潟のご出身だそうだ。ご自分が翻訳した児童書を持参されるというので、拙著も少しお持ちいただいた。少しでも被災者の皆様が元気になりますようにという祈りをこめて。

三好さんが訳された本は、モリー・ムーンというとても魅力的な女の子が主人公の楽しいお話。孤児院で育ったモリーがいろいろな経験と冒険にチャレンジするシリーズものだが、読んでいると元気が出てくる。三好さんは、モリームーンの宝石箱という楽しいサイトを運営しておられる。

新潟の温泉は一度だけ行ったことがある。あたたかなおもてなしを頂いて、ほっこりゆったりした記憶がある。
何かできることはないだろうか。

冬が近づいてきているけれど、村に戻れる見込みのない方々がまだ数千人単位でおられる。
何か、しよう。思っているだけでなくて、具体的な行動を起こそう。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

英国大使館

雨が冷たい季節になってきた。
知人に誘っていただいて、英国大使館へ。英国大使館は時勢を反映してか、厳重な警戒。招待状と身分証明書を見せないと入れない。

素粒子物理・天文研究会議(Particle Physics and Astronomy Research Council)の理事長であるIan Halliday教授の講演。リニア・コライダーや超大型望遠鏡計画など、国際協力が不可欠なプロジェクトについてのお話。

科学とイノベーションをドライブするのは、自治とミッション。英国は十分な自治をアカデミアに与えているが、十分な予算を与えているということはないとユーモアたっぷりに話された。

レセプションのときに、かねてから疑問に思っていたことを聞いてみた。
国際協力というのは、いったい科学ミッションにとって必要なことなのかどうか。「国際協力プロジェクト」は、調整する部分が多く、実際のミッションに関係ないところで相当なロードがかかる。自国で進めるプロジェクトなら、よけいな調整も不要だし、外交や政治的な部分での干渉が入ることも少ない。国際プロジェクトは、一国では賄いきれない予算が必要な場合の「資金調達」手段に過ぎないのではないか。

「もし、潤沢な予算があるとしたら、それでも国際協力プロジェクトとしてやりますか?」と聞いてみた。

ハリデイ教授は、一瞬困った顔をして、でもすぐに答えてくれた。

「確かに、国内でやるほうがどんどん好きなように進めることができてよい。しかし、そういう小さなコミュニティに閉じてやると、広がらない。アイディアの多様性という点から考えても、オープンなほうがいい」
「一番よいのは、優秀な外国人を自分たちで雇うことかもしれない」

こういう正直さは好ましい。
国際協力という名前がつくだけでつく補助金もあるくらい、「国際協力」という言葉にはパワーがある。しかし、国際宇宙ステーションをみても、「国際協力」をいれなければずっとうまくいっただろうにと思うことは少なくない。ハリデイ教授は、「英国がISSに関わらなかったのは賢明だった」とおっしゃった。国際的な協力は、本当に必要なときにだけすればよいと思う。

その帰り、知人とお茶を楽しんでから、インド大使館へ。
英国大使館と対照的にオープン。しかし、このオープンさも時勢の変化で今後はどうなるかわからないらしい。冷たい雨の日もあれば、暖かい太陽の日もある。

外はどうであれ、環境はどうであれ、人はどうであれ、自分の中身はいつもあったか太陽でいたいもの。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

いい・いい日

11月11日はいいことがたくさんある日。いい・いい日と読めるから。
と思っていたら、本当にいいことがたくさんあった。

朝、電話が鳴ったと思ったらしばらくぶりの知人から。物理学者で、一つの研究を30年来続けている。四国で情報工学を教えておられる。「経済物理学」の学会のために東京に来ているという。経済と物理とどんな関係があるのか知らないが、ともかく朝ごはんでもいっしょにということになり、都心のホテルへ。

朝からバイキング。お堀を眺めながらの楽しい食事。
来世では「シタールをひく物理学者」として生まれる予定なので、物理のお話もわからないなりに楽しくうかがう。それにしても、30年以上もひとつのテーマを追い続けていられるというのはそれだけですごい才能だと思う。

夜、こちらは前からのお約束で、お食事。分野の違う優秀な人と人を引き合わせ、その場に共にいるのは本当に楽しい。知的刺激をたくさん受けて、脳細胞が喜んで踊りだしている感じがする。

そのお話の中で特に印象に残ったこと。
進化論からいくと、女性が原型で男性は無理を重ねて男性になっているのだという。だから、男は弱くて寿命が短いらしい。なるほど。弱いのに無理してがんばっている(?)男性の皆さんに感謝。

強みは弱みに、弱みは強みに常に変わる。強さを笠にきることなく、弱さを嘆くことなく、何がどう変わっていっても、11月11日をいい・いい日と読む心を忘れずにいたい。

| | Comments (0) | TrackBack (1)

ジャスミン

浅瀬川というちゃんこ料理屋。「ちゃんこ」は「おかず」という意味なのだそうだ。鳥のだしをしっかりとったスープは絶品。後でごはんをたっぷりといれて卵を割り、さっと作る雑炊も心にしみる味だ。

「浅瀬川」という父の名前を襲名した息子が、今は土俵にあがってがんばっている。襲名できるような職業がいったいいくつあるかを考えると、これはすごいことだ。

番付表をもらう。初めて見たけれど、日ごろ目にしない力士たちの名前は芸術的なほどに長細い文字で書かれている。「浅瀬川」もまだ細いが、ちゃんと見つけられた。モンゴルとかロシアとか、カタカナの出身地が多いことに驚く。

ちゃんこを食べながら、ジャスミンの話を聞く。今日は午後に天文台のチームがきて学生さんたちとミーティング。夜は「反省会」という名の懇親会。彼らがくるといつも「反省会」なるものがセットされる。私はその会にだけ参加し、皆さんの「反省」を楽しく拝聴する。

JASMINEは、Japanese Astrometry Satellite Mission for INfrared Explorationの略。赤外線探査による位置天文衛星計画。星の距離が何億光年といっているのは、かなりアバウトな数字らしい。それを赤外線でちゃんと測ろうということらしい。

星の距離を測る。浮世はなれしたそのお話を聞くだけで浮世の垢を落とせるような気がする。これは「ジャスミン物語」として書けそうだ。物語は現在の情況から見える過去を紡ぎ、未来の希望につなげるもの。今、カンサットの次の「キューブサット物語」に取り組んでいる。学生たちがホンモノの人工衛星を作って宇宙へ打ち上げる話だ。WEBに載せているが、それをまとめるというよりは、新たな視点で「物語」にしたいと思っている。

書いていて思うのは、「予兆」というのか「サイン」というのか、そのようなものがどうやらあちらこちらに落ちているということ。そのときには気づかない「サイン」。後になると、「あれがそうだったんだ」と思うこと。その逆もある。そのときには明らかなように見えていた「サインらしきもの」。後になると、「あれは違っていた」と思うこと。そういうことは、日常生活にもよくあるのだけれど、見過ごしてしまうことが多い。

未来は予測不可能だという。では、過去は解析可能なのだろうか。学生さんたちの不屈の挑戦を文章に紡ぎながら、過去もまた予測不可能なように思えてならない。

ジャスミンのプロジェクト自体は2014年の打ち上げを計画(希望?)しているそうだが、その前段階としてナノ・ジャスミンプロジェクトを計画している。そこに学生の衛星プロジェクトがからんでいる。卒論のテーマにもなっているので、参加している学生2人は真剣そのもの。天文台の皆さんは、こんな研究をすることが楽しくて嬉しくてたまらない様子。

いつか、この日のことを思い出すことがあるといい。
そのときは、ジャスミンプロジェクトが成功しているだろうか。「ジャスミン物語」も筆が進んでいるだろうか。どちらにしても、私はきっと、この初期の「反省会」に参加していたことを光栄に思っているだろう。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

神楽坂の夢一夜

ちょっと遅い「お誕生会」を大学時代の同級生二人が開いてくれた。
登別温泉での同窓会には私は行けなかったが、彼らは楽しみまくったらしい。行けなかった私に同情票、といったところか。

新しい地下鉄大江戸線の牛込ナントカという駅で待ち合わせ。牛込ナントカは二つあって、私は間違った駅に15分前について待っていた。待てど暮らせど来ない二人。よくよくみたら、駅名が違っている。

7分遅れで無事に到着。ご愛嬌だが、パンクチュアル・レイとしてはちょっと不覚。
神楽坂の奥まった静かなところにある一軒家。一日に一組しかお客をとらないという料亭。こんな店が本当に存在していたのだ。接待が仕事(?)みたいな商社マンの友人に感謝。

ゆったりした広い和室に三人だけで座る。高級そうな掛け軸に、これまた高級そうな和服姿のおかみ。
本当に東京の真ん中かと思うほどに静か。贅沢な時間と空間。

日ごろ、学生さんたちと「学生食堂」なるところで食事をしている私は、場違いもいいところ。しかし、カメレオンのごとくにあっというまに場にとけこむ術を身につけているので、おいしく楽しくお食事をいただく。

おいしいビール。どこか外国産らしい。緑色のビン。でもこんなもので驚いてはいけない。

「ウチのワインはいかが?」
といわれ、よくある「ハウスワイン」かと思いきや、そこの料亭のラベルがはられたワインが運ばれてきた。スペインで作ってもらっているそうだ。私の好きなディープなレッド。これはおいしい。

本日のお献立

ザーサイと鶏肉のあえもの。
ひじきの煮物。
いわしのおさしみ
タイの焼き物
茶碗蒸し(マツタケ入り)
レンコン、こいも、にんじんの炊き合わせ。

ここで「揚げ物」が出るはずだったが、おなかがいっぱいだったのでとばしてご飯へ。

サービスでいくらのしょうゆ漬け
そして。。。。まつたけご飯!

三人のために三人分だけ、土鍋で新米を使ってていねいに炊きあげてくださったものでおいしいなんてものではない。全員がおかわりをして、すっかり全部食べてしまった。

おかみが気のきいたおしゃべりをしながらデザートに柿をむいてくれる。この人は、なんて人を居心地よくさせるんだろう。すっかりくつろいでお茶を頂く。

夢のような気分で、おかみに外まで送っていただいて、「下界」に降りる。飯田橋の駅までくると、もうあたりはすっかりいつもの雑踏。

あれはきっと夢だったのだ。
お店の名刺をいただいたけれど、それは木の葉で、あの場所に戻るときっと竹やぶか何かが生えているに違いない。

と思うような夜。こんな夜もたまにはいい。


| | Comments (0) | TrackBack (0)

きつねとたぬき

新大阪の駅構内の立ち食いうどん屋。
関西のうどんはおいしい。

久々のシタールのレッスン。
今月は、半月以上海外にいたし、帰国してからも忙しくて、練習があまりできなかった。
滑り出しは悪くなかったが、やはり、めっきはあっというまにはげる。久々の愛のムチ。こんなに弟子のために必死になってくれる師匠に出会えたのは奇跡的。大人になってこんなに叱ってもらえるのはありがたい。幸運に感謝。

指をけがしてタブラがたたけない生徒が来た。師匠はわざわざガマックという「音階つきの打楽器」を用意して待っていた。人差し指が使えなくても使える楽器だ。音楽に対して、また、人に対しての誠実さが伝わってくる。そして、シタールとあわせての練習。楽しい時間だが、私の指は思うように動いてくれない。芸の道は厳しい。でも、なんとかここを通り抜けて自在に弾けるようになりたい。

「自分で場の雰囲気を作りなさい」という師匠。レッスンが終わってしばらくたつと、その意味がじわじわとわかってくる。でも、「わかる」と「できる」は違う。わかったからできるというものでは決してない。「わかる」は「できる」に近づくための第一歩に過ぎない。

日帰りで大阪へいくので、行きも帰りも駅弁。でも、こういう日はあったかいものが食べたくなる。そんなとき心にしみるのは、あったかうどん。時間がなくても食べられる。きつねうどんがお気に入りだ。

ちょっとした発見。
大阪では、「きつねうどん」は、あぶらげがのったうどん。そして、「たぬきそば」は、あぶらげがのったそば。
私はずっと、「きつね」とは、あぶらげのことで、「たぬき」とは「てんかす」のことだと思っていた。だから、

きつねうどん=あぶらげがのったうどん
きつねそば=あぶらげがのったそば
たぬきうどん=てんかすがのったうどん
たぬきそば=てんかすがのったそば

というふうに考えてきた。しかし、ここでは「てんかす」がはいったうどんは、「あげたまうどん」という名前を持っていて、たぬきうどんというもの自体が存在しない。

常識とはこんなもの。時と場所によって大きく違う。
一人納得して新幹線に乗った。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

« October 2004 | Main | December 2004 »