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ホカホカのゲラ

「キューブサット物語」もそろそろ仕上げに入っている。ホカホカのゲラがあがってきた。

この本はどんな本になって世の中に出ていくのだろうか。
「上がれ!空き缶衛星」のときも「プロジェクトX」みたいだとよく言われたが、プロジェクトXとの大きな違いがある。そこが書き手にとっては嬉しくもあり、悩ましくもある。

ドキュメンタリーだという点では違いない。登場人物に架空の人物はいないし、作り話を書いているわけでもない。
プロジェクトXとの大きな違いは、「ほんの少し前の過去」を描いていることと、「未来を持っている若者」が主要な登場人物だということだ。「遺影」も登場しないし、30年前のことについて語ることもない。

書き手として嬉しいのは、この本が「よき未来を創る」ことにいくばくかでも貢献できるかもしれないという淡い期待を持って書けるということだ。ほんの短い間に宇宙のものづくりをしたかった人たちにとっての環境が整ってきているし、協力者も賛同者も参加者も支持者もふえている。

反面、気になるのは、「未来を持つ若者」のすくすくと伸び行く未来を、この本がゆがめてしまったりしないだろうかということだ。表現ひとつで、同じ事実が180度違って見える。事実はひとつかもしれないが、人の心を通してみる「真実」はいくつもある。

たとえば、キューブサット物語で最後に「切り取る一瞬」は、打ち上げのその日だ。2003年6月30日。その前に展開される話は、すべてその日に向かっているわけだから、その日の描写ははずせない。だからその日のできごとを切り取っていく編集作業をするわけだ。もちろん、すべてを描けるわけではない。同時並行的に数箇所で作業は行われているが、一度に書けるのは一箇所だけだから、「編集」作業がどうしても入ってしまう。

すべてのことには光と影があって、アップダウンがある。たまたまその日、人生の「ダウン」にあたっていた人にとっては、その日を切り取られて描写されるとつらい。縁の下の力持ちをしていた人は、まばゆい光を放つイベントの影に入ってしまう。

分野が違えど、やっていることが違えど、一生懸命生きている人には、きっと「光と影」の本当の意味、「アップダウン」の本当の価値がわかるだろう。

影があるから光が際立つのだ。ダウンがあるからこそ、アップの喜びはひとしおなのだ。そして、それらは常に流転していて、ひとときもじっとしていない。アップダウンを繰り返しながら、自分はある方向に向かって歩いているという実感をもてたとしたら、それはとても幸せな人生なのではないか。そんな風に思う。


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Comments

どうもありがとうございます。
いまのところ、3月22日に発売の予定です。
もう少々お待ちくださいませ。

Posted by: Rei Kawashima | 2005.02.25 at 12:30 AM

これを読んでいるだけでもドキドキします。
早く本が読みたい。
でも、言葉を越えたものを言葉で表現することの難しさ、書くことによる影響・・・、苦悩もたくさんなのですね。
でも、それでも、書かねば、伝えねば!
その通り!!
待ってます!!!

Posted by: 文月 | 2005.02.24 at 08:37 PM

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