ロケットボーイズ
「ロケットボーイズ」という映画があった。
少年たちがロケットを作って打ち上げる実話を映画化したものだ。あまり豊かでなく、また先行きもあまり明るくなさそうな炭鉱の町で、少年たちはロケットを作ることに夢中になる。映画の中で、炭鉱の事故が描かれ、少年の一人の父親が事故に遭う。
この映画を私は複雑な思いで見た。父子の対立と情愛とか、宇宙への情熱とか、少年たちの友情とか、そんなことはもちろん涙を誘うのに十分なのであるが、炭鉱町の描写が、かつて育った町と重なってみえてしまったのだ。
衰退期の炭鉱で過ごした人は多かれ少なかれトラウマを持っているのではないかと思う。戦争や大災害のトラウマに比べれば、とてもトラウマなどと呼べるものではないかもしれないが、目に見えない、自分でも気づかない傷跡をどこかに残している人が多いように思う。
坑内火災があれば、人が中にいても水を注入して消し止めるしかない。そうしなければヤマ全体が死んでしまうから他に選択肢はない。ガスが出ても、落盤事故があっても、誰かが犠牲になる。いつも「死」と隣り合わせの日常。それでも景気がよいときはまだましだった。
自分たちの努力ではどうにもならないエネルギーの転換による産業の衰退。人員整理と合理化の果ての閉山。クラスから一人また一人と生徒がいなくなっていく学校。さびれていく商店街。
炭鉱と宇宙。
この、一見何の脈絡もない二つのもの。映画「ロケットボーイズ」で偶然につながっていたその二つが、北海道のかつての炭鉱町でつながってきている。
北大のカムイロケット開発を支援するのは、かつて炭鉱で栄えていた赤平市にある植松電機という会社。植松電機は小さいけれど、バッテリー式マグネットの製造販売で成功している優良企業だ。喫煙・茶髪・ピアスは禁止というのが、現代風でなくていい。
社長の息子でもある植松努専務は、以前、三菱重工で飛翔体の設計をしていたという。不思議な縁だ。赤平市を含むこのあたりは、空知地方という。「空と知」。まさに宇宙にはうってつけの名前だ。
北大の学生実験をサポートしている植松さんが言う。
「小さい頃は炭坑夫さんの話をよく聞かされました。顔中真っ黒にして、目と歯だけが真っ白に光っている顔の話です。深夜に及ぶロケットエンジンの実験が終わったとき、自分も、学生も、顔中すすけて真っ黒です。汚れた手で鼻やら目やらこするから、ひどい顔になります。でも、歯と目が光ります。うまく行ったときの喜びはひとしおです。学生らのすすけた顔を見て、彼らがこの地域を支える新しい坑夫さんかもしれないな、と思います」
ロケットボーイズ。
少年の心を持つ人なら、老若男女を問わず、そう呼んでいいと思う。
北海道のロケットボーイズは、これからどんなロケットを創っていくのだろう。
宇宙へ、空へ、未知なるところへ、飛び上がる力が彼らに与えられんことを!
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