ホンダの飛行機
日本航空宇宙学会の年会があって、参加した。
論文賞が二本、技術賞が二本、授与された。ホンダ・ジェットの開発者が「技術賞」を受賞。藤野道格氏が講演。
胸がすくような開発物語だ。飛行機を作りたいという熱意を持った人たちと、それをサポートする会社。国の補助金や技術支援は一切受けず、単独開発したという。さすがホンダ、と思わせてくれる。
ネットでいろいろ調べると、ホンダが最初に軽飛行機開発宣言をしたのは、1962年のことだそうだ。宣言の主は、もちろん創業者の本田宗一郎氏。それ以降に生まれた若い技術者が創業者の想いを知ってか知らずにか、作りたいと提案して、本当に作ってしまった。
1997年からはじめた開発は、6年で実を結び、2003年には見事、飛行に成功する。エンジンはお手の物だろうけれど、車と飛行機では勝手が違うだろう。そんな中で、つくった飛行機は、高性能でお値打ち価格。小型飛行機の需要が多いアメリカからの引き合いがけっこうあるそうだ。
グロービスのマーケティングのケーススタディの初回は、ホンダのモーターサイクル。1960年当時、アメリカに存在していなかった小型モーターサイクルの潜在市場を見抜き、なかった市場を作ってしまったのがホンダであった。当時の「アウトロー」がコワイ格好で轟音を立てて乗るバイクから、善良な市民が乗る安全な乗り物に変えることに成功したホンダは、ハーレーやらBMWやらを押しのけて、トップメーカーになる。
それができたのは、マーケティング力もあるけれど、技術力だと思う。技術者自身がほれ込むような、本当にいいものを作ったら、これを何とか売りたいと思うマーケッターは必ず現れる。逆はない。凄腕のマーケッターがいても、いい製品がなければ売れないのだ。売ろうとしたら、マーケッターは詐欺師のテクニックを持たなければならない。
ホンダの小型飛行機が米国の空を席捲する日も近そうだ。また、新しいホンダの神話が生まれ、マーケティングのケーススタディが書かれるのだろうか。
楽しみがまた一つ増えた。
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