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1000分の1の神様

カムイロケットが米ベンチャーに見初められたという記事を書いたら、植松さんからメールをいただいた。

神様はいます、という植松さんは、自らが「神様の手足」のような働きをされる。

突然の代役でロケットプレーン社のチャックさんが室蘭を訪れることになったとき、余分の招聘予算はなかったらしい。室工大の棚次先生から電話で事情を聞いた植松さんは、自腹を切ることを即決した。3000ドルほどだ。

中小企業の経営者にとって、会社のお金と自分のお金に区別はほとんどない。そのお金は、ほかのことに使うはずのお金だったろう。しかも、植松さんは、落下塔などの施設を作るために、2億円もの借金を個人で負っているのだ。あまっているお金があろうとは思えない。大企業の「サラリーマン」が「決済」する場合は、重役であろうと部長であろうと、自腹はまったく痛まない。同じ30万円でも、意味が大きく違うのである。

しかし、中小企業の親分たる植松さんは、ただのお人よしではない。厳しい製造業の世界で、従業員とその家族の生活を背負って生き抜くのは並大抵のことではない。

「3000ドルも支払ったからには、チャックさんとお近づきになろう」

こう決めて、シンポジウムのレセプション用に、ビデオ放映ができるようなスクリーンやプロジェクターなど大荷物を持ち込んだ。そして、レセプションの席で、ビデオのセットを終えると、さりげなくチャックさんの横に立った。たまたまではなく、意図的にそこにいた、というのである。

ビデオの中で、打ち上げ直前になると、チャックさんはワクワクした表情で、隣にいた植松さんに聞いた。
「打ち上げだね。酸化剤は何を?」

そして、それを発端に、二ヵ月後にチャックさんが再来日するようなことが起こったのである。とんとん拍子に話は進んで、8月に、チャックさんは自費で来日された。

神様が作ったチャンスをさらに大きなものにする手助けをしたのは植松さん。永田先生が、「植松さんには神様がついている」とおっしゃっておられたけれど、植松さん自身が、神様の手足のように動いているように見える。

「神様の1000分の1くらいのこと」と謙遜しながらも、チャックさんと話す時間が持てなくて、ちょっと残念そうな植松さん。

「実際に物をつくっている、うちの工場に来てほしかったんですけどね」

しかし、すぐに「こっちから行けばいいことだ」と、英語の勉強にとりかかる植松さんは、前向きだ。

誰もが神様の1000分の1でも1万分の1でも1億分の1でもいいから、神様の手足のような動き方をすれば、世の中はどれほどスムーズにいろいろなことが流れることだろう。

まずは自分から。
いわゆる「陰徳」(匿名の善行)を積むことが、神様の手足への第一歩かもしれない。そうして、世の中がよくなっていくのを、「ムフフ。ちょっとは役にたったかな」とにやにやしながら見ているなんて、想像するだけで気分がいいではないか。


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Comments

akiakiさま

コメントありがとうございます。
能代は本当にお疲れさまでした。

建設的な動きがあちこちで起こっているように見えるのは、「神様の手足のごとくに」それを起こしている人たちがいるからですね。
魔法のようにうまくいくことはなくて、そこでは誰かが何かをしてくれていたから、うまくいったように見えているのですね。

自分が「陰徳」を積むことの最大のメリットは、先人や隣人の陰徳が見えてきて、皆さんに感謝したい気持ちになるというところにあるように思います。

たくさんのご紹介したい人たちの存在に感謝をこめて。

Posted by: Rei Kawashima | 2005.09.15 at 12:00 AM

まだ能代の残務処理が終わっていないakiakiです。

その昔まだ私が企業に居た頃の話しですが、とある宇宙関係のアウトリーチ活動の提案をとある人にしたときのこと。その方からのお返事の冒頭が、”akiakiさんの活動ってNPOみたいですね。僕も会社を引退したらNPO活動に励みたいと思います”で絶句したことを思い出しました。とか書くとその人が嫌な人みたいに読めちゃいますが、実際はとても力になってくれる人なんですが。
彼の主張は、”ホントはお金を貰っても良いような仕事を無償でやったら、その分だけ内部経済に入るべき『宇宙産業』を外部経済に追いやってるんだよ”と言うことなんだと思います<そう実際に言われたこともあります。
まぁ確かにそうなんだよなぁと思うわけですが、しかしどこかでやっぱり「陰徳」?(というより抗しがたい実現への欲求なんですが)がないと動き出さないわけでとかも思ったり。難しいですね、ホント。

千里の道も一歩から。いろんなところで頑張っている人達が居ると、とても勇気づけられます。これからも沢山、そんな人達のお話を御紹介下さい!

Posted by: akiaki | 2005.09.14 at 08:03 PM

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