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アメ横のタラコ

アメ横をブラブラとあるいていたら、タラコが8腹くらいで500円。通常、2腹で398円くらいで喜んで買っているのだから、これは破格の安さ。「冷凍したら3ヶ月は持つよ」との言葉に、ホイホイと購入。中国ショップで黒酢に紹興酒も買い込んだ。

それから、新幹線のディスカウントチケットを買ってから、指定席予約のため、上野駅へ。今週末は法事で神戸に行くことになっている。JR上野駅は、かつての物悲しいような面影はまったくない明るくて近代的なショッピングセンター。ハードロックカフェまであるのだから驚きだ。無事に予約も終了し、あとは帰るだけ。

帰り際に、ふと見ると、すてきなカバンが目に入った。ビジネスにも一泊くらいの旅行にも使えそう。購入することにして、お会計。店員の若い女性が私の食材が入ったビニール袋をみて聞く。

「お買い物ですか?」
「はい、ちょっとアメ横で」
「アメ横って安いんですか?行った事ないんです」

上野に勤めていて、アメ横に行ったことがない人もいるらしい。

「安いですよ、タラコなんて、500円だったんですよ」
「えっ、タラコですか?私、好きなんです」

そして私が取り出したタラコがたっぷりはいったパックを見て、仰天。
「えーーっ!これが500円なんですか?」
「そうですよ」
「行きたいです。でも休憩時間、短いから・・・」

その店への行き方などを説明しているうちに、ふと思いついて言ってみた。
「よかったら、これ、お譲りしましょうか?」
帰り道にまた買えばいい。この方は、9時までお仕事なのだそうだから、アメ横の店は閉まってしまうだろう。

彼女はとても嬉しそうな顔をして、
「えっ、でも、いいんですか」といいながら、お財布をいそいそと取りにいき、その場で「商談(?)」成立。

私はカバンをカードで払い、彼女は500円玉を私にくれた。
店員さんは、カバンも売れ、大好きなタラコも安く手に入り、満面の笑みで手をふって送り出してくれた。

こんなおしゃれなお店で、カバンを買い、タラコを店員に売ったお客は、たぶんこれまでに一人もいなかっただろうし、これからもきっといないだろう。いいことだったのか悪いことだったのかわからないけれど、彼女も私もその数分間、とても楽しかった。

帰り道に、またアメ横で、明太子と筋子を購入。それぞれ500円。タラコは彼女に譲ったのだから、別のものがいい。

タラコが作ってくれた小さな縁。一瞬で消えるかもしれないけれど、温かな縁であることは違いない。私も知り合いに話して楽しいし、きっと彼女も知り合いに話しているだろう。

「お客さんがタラコを売ってくれた」と。
きっと「信じられなーい!」という笑いが起こっているだろう。
もしかしたら、彼女やご家族のお弁当にちょこんと入っているかもしれない。

小さな温かな縁が世界中で絶え間なく生まれていれば、点滅するネオンサインのように、全体として明かりが消えることはない。善意をふみにじるように見えることがどれほどあろうとも、それを上回る善意を生み出していけばいい。

善意の泉は、60億人の人たちの心のひとつひとつにある、と思う。とすれば、なんと豊富な資源を私たちは持っていることだろう。泉の水はただ湧き出るだけで、尽きることはない。自分の行動の底にあるものが善意の泉からきているかどうかを見分けるのは、実はとても簡単なことなのかもしれない。


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