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甘えんぼの末娘衛星

22日に網展開実験は無事に成功した。18日打上げのはずが、ずいぶんと延びての成功。

網展開の様子が動画でアップされていた。こちらにも詳細情報が掲載されている。中須賀研究室のホームページでは、皆さんのお顔が見える。神戸大の賀谷先生が誇らしげにマイクを持っているところも見える。

外から見ると、天候のせいで打上げが延びて大変だったろうということくらいしかわからなかったが、戻ってきた皆さんにお話を聞くと、いろいろと大変なことと楽しいことがあったらしい。

娘衛星は三機。Tちゃん、Rちゃん、Lちゃん。RちゃんとLちゃんは双子。同じ仕様で作っている。しかし、双子の妹のLちゃんは、一番の甘えんぼで、皆さんに遊んでもらいたがって駄々をこねる。

そもそも、1月5日に宇宙研で行った「かみ合わせ」のときにも、Lちゃんは駄々をこねていた。バッテリーの具合が悪く、調べたところ、電池の根元がぬけている。プロマネの佐原さんをはじめ、学生の皆さんは、徹夜で電池の交換作業を行い、翌朝の試験ではOKが出て、なんとか梱包に間に合った。

しかし、内之浦で打ち上げ前のチェックで、Lちゃんのジャイロが出力しなくなった。衛星の仮り組みのときのこと。ロケットに衛星を取り付ける作業を午後3時から行ったとき、「2時間くらい」と見積もっていた作業であったが、いろいろと手間取って5時間以上かかり、9時から最終のチェック。ロケット側の皆さんはジリジリしながら待っていて、やっとこれで帰れると思ったところのことだった。

テレメトリをチェックしたら、Lちゃんのジャイロのメーターがゼロ。微動だにしない。青ざめる皆さん。いったい何が起こったのか。

調べてみたら、電池とジャイロの間のコネクタが接触不良。電力がまったく供給されない状態だった。

「コネクタを取り替えたほうがいいんじゃないか」
「取り替えても同じことが起こるかもしれない」
「半田付けしよう」

今回は、「備えあれば憂いなし」を実践して、ほぼすべての部品の予備を持参している。予備があれば、きっとちゃんと動くだろうと考えてのこと。一種のゲン担ぎみたいなもの。科学を学ぶことと、ゲンを担ぐことは、決して矛盾しないらしい。

結局、半田付けをすることになり、みんなで寄ってたかってしっかりと半田付け。やっとジャイロにも電力が届くようになった。

「充電しないといけないね」
充電中に何かがあっては困るので、誰かがついている必要がある。
野尻さんがその大任を引き受けた。

内之浦の組み立て室は、夜は暖房がとまる。しかし送風はとまらない。「屋内吹きさらし」の中、寒さに震えながら一夜を衛星たちと明かした野尻さんは、風邪もひかずに元気に帰還。充電も無事終了。

土曜日。21日。この日はきっと打ちあがるだろうと思っていたのだが、結局ダメだった。準備をすべて終了して本番並の緊張感を持った中でキャンセルの知らせを聞くのはつらい。しかし、せっかくなので再チェック。そうしたら、Lちゃんがまた不審な動きをする。漏電している可能性もあった。再び青ざめる皆さん。幸いなことに、今回はいろいろ手を尽くして調査したところ、大丈夫だった。

そして、22日。天気はよいが、風が心配。打上げ直前のチェック。親衛星に火を入れて(電源スイッチをいれて)から、テレメチームから指令電話で連絡がくるまで、ほぼ45秒間。これがとてつもなく長い時間に思われたそうだが、問題なし。娘衛星のスイッチを順番にいれていく。中村さんが声をかけ、舟根さんがスイッチをいれる。このときのスイッチオンの手つきがとても素敵だったらしい。

そうして、無事に打ちあがり、実験もうまくいった。
本気モードのリハーサルが二回もあったので、本番のときは、とてもスムーズにできたそうだ。なにごとも、うまくいくための試金石なのかもしれない。

内之浦の裏話はいろいろあるらしいが、楽しいバージョンの皆さんのコメントを載せておこう。

●宿舎の感想
「一週間、毎日温泉に入ったので、お肌がスベスベになりました」

●食事の感想
「毎日、ごはんのおかわりをみんな平均5杯はしていた。おひつがあっというまにカラになってねー。」
「Eさんは9杯もおかわりしていた」
「いやー、お刺身がおいしくて」
「お茶碗が小さかったんだよー」

●卓球の感想
「神戸大の某君は、最初は弱かったのに、最後の日にやったら、負けちゃった」
「毎日練習していたのかな」

一歩ずつでも前へ進んでいるという実感があるのは、すばらしいこと。

2月18日(予備日は16日から20日まで)には、東工大のCute1.7が内之浦からの打上げで、学生初の本格的サイエンスミッションに挑戦する。成功を祈らずにはいられない。

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祝!網展開実験成功

天候が悪くて延期が続いていたS-310-36号機が、本日13時に無事に打ちあがり、東大の網展開実験も成功したそうだ。ヨカッタヨカッタ。

今日は上がるか、明日は上がるかと思いながら待つのはつらい。打ち上げが終わってからお休みがあるのは嬉しいだろうが、打ち上げを待ちながらのお休みは、心から楽しめない。待つことに疲れが見え始めていたらしいけれど、打ち上げの成功、実験の成功はそんなことすべてを吹っ飛ばしてしまう。

皆さんが戻ってこられて、詳しいお話をうかがうのがとても楽しみだ。

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Dataiでランチ

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「最終日のランチはランカウイで一番いいホテルに行きます」
Aさんがそうおっしゃったとき、彼のいつもの冗談かと思った。彼が冗談をいうとき、目がへの字になり、口元に妙なしわがよるので、すぐにわかるのである。

しかし、これは本当だった。午前中、森をイルシャドさんや、蛇使いのギネス記録を持つというオズマンさんに案内していただく。オズマンさんに、解毒剤に使える植物と、その使い方を見せていただいた。一人でその植物を見分けられるかどうかは疑問だが、そういうものが森にはあるのだということを学んだだけで満足。

大きな木に縦に線がはいっていると思いきや、小さなアリさん(訂正:本当はアリでなくて、ゴキブリの仲間のシロアリだそうです)の行列だったり、葉っぱが一枚もない不思議な植物を見たり、なにかの効能があるという高級キノコを見せていただいたり、ひんやりとした森林の中で、初めて見る不思議な光景に感嘆することしきり。

イルシャドさんは、ほぼ毎日この森を歩いておられるそうだけれど、ちっとも飽きることはないらしい。森は生きているから、毎日たくさんの新発見があるのも不思議ではない。

ひとしきり歩いた後に、素敵なホテル"The Datai"へと移動。このホテルは、ダタイのリゾート地の中にあり、お値段も最高ならサービスも最高なのだそうだ。その一室で彼らのレクチャーを聞く。

暖かい地方ならではの風通しのよい空間。睡蓮も咲き放題で、美しいことこのうえない。こういうところをデザインする人はなんと幸せなことだろうと思う。きれいな鳥がたくさんきてくれるように、ホテルには鳥が好きそうな木を選んで植えているそうだ。そして、すべてにわたって自然環境に配慮した運営がなされているとか。ゴルフ場があるところなど、自然保護の観点からはどうかとは思うけれど、ゴルフは楽しいと思うので、ここでも私は自己矛盾の迷い道に入り込みそうになる。

そこで、おしゃれでたっぷりとしたランチをいただく。数種類のカレーのようなものが出てくる。お魚を揚げたのが入っている黒っぽいのがとてもおいしい。いずれもたいそう口に合う。旅に出ると、前世はここにいたのかもしれないと思う場所に出会う。そういうところが世界中にたくさんあるのは、嬉しい。

窓からはプールが見えて、ゆっくりくつろぐ人たちの姿が見える。

「あの人たちは、どうしてこんなところにきて、どこでもできることをするんだろうね。プールの横で寝そべるのなんて、ここでなくてもどこでもできるのに」

私をこのツアーにいざなってくださった方がおっしゃる。この方のおかげで、コスタリカにもいけたし、ランカウイにも来ることができた。感謝。

日ごろ疲れていれば、一日中でもホテルのプールでごろごろしていたくなるのもわかる。けれど、森を歩けば、ごろごろしているよりずっと疲れは取れる。不思議だけれど、そうなのだ。ごろごろしている人は、それを知らないだけ。知る機会がなかっただけ。批判するよりは、お誘いするほうが楽しい結果になりそうだ。

デザートは、新鮮なフルーツ盛り合わせ。大好きなマンゴーが出てきてご機嫌。こんなにおいしいものを食べられない人も世の中にはいらっしゃる。こういう方と「平和共存」するのは簡単だ。残して捨てられてしまうのももったいないので、代わりにいただく。こうして、ランカウイのゴミ問題にほんの少し貢献することができたが、かわりに自分の余分な脂肪を増やすことになった。しかし、幸せ感、満足感は増加している。

この微妙なバランスをどうとるか。どう受けとめるか。いろいろなことのヒントは、意外なところにあるような気がしてきた。

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ランカウイの森

1月17日。熱帯林ツアーのため、ラヤ山へ。島の中央にあり、標高は881メートル。

今日のツアーのガイドは、Irshard Mobarakさん。インド系の方だが、この島の自然をこよなく愛しておられるご様子。日本人が多いと見えて、動植物の名前を日本語でしっかり覚えておられる。バードウォッチングでは、双眼鏡でも見えるけれど、望遠鏡持参の方々が焦点を合わせてくださったのを覗かせていただくと、目や羽などはっきりと見える。irshad

オオサイチョウという鳥の存在も知らなかったけれど、確かに美しい。目が赤いのはオスなのだそうだ。巣を作るのに、大きな葉をとってきて、蜘蛛の巣ではりあわせるという裁縫鳥。おじぎそうがどうしておじぎをするのかなど、ユーモアたっぷりに話してくださる。このガイドさんは、なんとすばらしいコミュニケーション能力をお持ちなのだろう。全身で語りかけるその言葉。英語がわからなくても、きっと何か伝わってくるものがあったと思う。

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「絞め殺すイチジク」
大きな木の下で、Irshadさんがちょっとギョッとする単語を口にした。他の木に寄生して成長し、上から自分の根をたらしていく。自分の根が地面についたら、そこから急成長を遂げて、ホストの木を乗っ取ってしまうのだという。

「ビジネスの世界では、これはよくないことかもしれないが、自然界では問題ありません」
元銀行員だったという彼は、さりげなくそう言う。人間の世界の常識は、自然界の掟とは異なり、人工的なものであるらしい。自然の仕組みはよくできていて、「絞め殺すイチジク」の木が森を支配することはないそうだ。

私が聞きたかった質問を投げてみる。
「森の観察のために、衛星からのデータを使っていますか?役に立ちますか?」
彼の答えは、
「もちろん、使っているよ。とても役に立っている」
「解像度はどれくらい必要ですか?」
「1メートル。本当は0.6メートルのがほしいけれど、高いからね」
イコノスの画像を使っているらしい。しかし値段が高いから、NGOが入手するのは難しい。二年前に研究者から譲ってもらったものを、今も使っているという。
「本当は、3ヶ月に一度くらいは新しい画像があるといいけれど、高いからとても無理だよ」

たぶん、簡単にGISの加工ができるソフトがあって、いつでも最新のデータをダウンロードできたら、もっと役に立つことがあるだろうに。もう少し解像度が悪くても何かできそうなものだけれど。

環境保護に衛星画像データが有用だというのはわかっていても、本当に必要な人の手には届かないのが現実。ニーズがあっても、お金がなければ買えない。

研究者は研究予算が切れたら、観察をやめてしまうことが多い。あるいは論文が書けたら同じ研究は続けないのが普通。本当は、半永久的に続けていかなければいけない地道な観察は、高コスト構造である限り、続かない。

志を持って活動する人たちが必要とする画像を、格安か無料で届けられる仕組みができないだろうか。ランカウイの美しい自然の中で、そんなことを妄想する。

山頂まで、ピックアップトラックの荷台に乗せてもらって、顔にあたる風と景色を満喫しながら登る。山頂には近代的な建物があり、大きなパラボラアンテナも設置されていた。

夕食は高床式の民家で、と聞いていて、楽しみにしていた。普通のお宅でおもてなしを受ける。感激。尾島さんのオフィスのお隣のお宅のにこやかな美しい方が作ってくださった料理の数々。かわいらしいお嬢さんが3人。

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床に座って、お皿も床におき、右手で頂く。とてもよい香りのごはんにカレー。トムヤンクンのようなスープ。お魚。野菜の炒め物。いずれもとてもおいしくて、嬉しくなる。男性は胡坐が、女性は横すわりが正しい座り方らしく、座り方も教えていただいた。そしてデザート。抹茶寒天のような味のものに西瓜。甘い紅茶。

最高のおもてなしを頂いた後は、お嬢さんたちにゲームを教えていただく。小石をおはじきのように使って遊ぶ。懐かしいような照れくさいような気分。その気分と、ここにこうしてすわっていることの不思議さ、出会った方々とのご縁を大事に味わう。

ランカウイの夢のような日々はあっというまに過ぎて、明日は帰国。


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ランカウイのゴミ問題

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1月16日は国境を越えてタイのバタン島へ。船で1時間半ほど。熟睡しているうちに到着。
この日はダイビングの予定。久々のダイビングでなのでちょっと緊張。来る前にプールでリフレッシュ講習なるものを受けてきたけれど、海は勝手が違う。

大潮の時期で、プランクトンが多いせいか透明度はいまひとつだったけれど、珊瑚もお魚もきれいだった。南の海の魚はどうしてこんなにも色鮮やかで美しいのだろう。この浮遊感も本当に久方ぶり。すっかり忘れていた感覚が少しずつよみがえる。

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午前中に一本潜り、ビーチでランチを頂いた後、午後にまた潜る。陸にあがると、ケーキとフレッシュジュースが待っていた。ケーキは焼きたてなのか、ほんわかとあったかい。至れり尽くせりの心のこもったサービス。ありがたくおいしく頂く。

ランカウイに戻ってから、夕食。今日はタイ料理をセットしてくださっている。Barn Thaiという名前の素敵なレストラン。マングローブの森のずっと奥まで遊歩道が作られていて、450メートルほど歩くと、そのレストランが姿を現す。

その橋の途中でなにやら異臭。近くにゴミ処理場ができて、そこの匂いだという。ゴミの量はどんどん増えているという。元凶はホテルらしい。ランカウイの美しい自然に魅せられて訪れる観光客が増えれば増えるほど、ゴミの量も増える。二酸化炭素を大量に撒き散らす飛行機に乗ってやってきて、美しい島のゴミを増やし、生態系を壊しているのは誰かといえば、お気楽な観光客であって、それはほかでもないこの自分である。

南の島は豊かで、やしの実は落ちてくるし、果物は勝手になるし、海では魚や貝がいくらでも取れる。十分に幸せに暮らせるのではないかと思ったりもするけれど、そこの住民の立場になれば、そういうわけにもいかない。文明の利器はやはりほしいし、「もっと豊かな暮らし」を求めれば、代償を払う必要がある。環境問題は、その代償が、ある地域に限定されえず、全地球に及んでしまうところが脅威であり、希望でもある。

環境問題は、常に矛盾をはらむ。批判の矛先は自分にも向いてくるからだ。解はいったいどこにあるのか。このツアーに参加している方々は、いつもそのことを考えておられる。利益を追求する企業の一員として、そのことを考え提言する立場に身をおくのは、なかなか大変なことに違いない。

その広いレストランには川に面したベランダがあって、そこから川に降りていくこともできる。好奇心の強いメンバーの一人が降りていったが、足をすべらせて泥にはまった。底なし沼のようにひきこまれる感じがしたという。環境問題も底なし沼なのだろうか。

まったく申し分なくおいしい料理を頂きながら、環境問題の底なし沼に落ち込まぬよう、この星の未来に想いを馳せた。ずっと先の未来には、消えてしまう運命の地球。宇宙的な時間から考えれば、人生はほんの一瞬。百年生きたところで、短いことに変わりない。

今、何をすればよいだろう。何を言えばよいだろう。何を考えればよいだろう。

美しい景色と楽しいアクティビティとおいしい料理と愉快な会話に囲まれて、自分の中で少しずつ膨らんでいく想いがあることに気づく。

多くの人たちの真剣な努力が、いつか美しい花を咲かせますように。

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ランカウイの満月

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1月15日。カヤックでマングローブの森をめぐる。ツアーは、尾島圭吾さんがガイド役。20歳のときにここに来てから11年という彼は、日焼けした顔に大きな目が印象的。一所懸命に人生を生きている人の目はきらきら輝いている。

マングローブという植物はないそうだ。それは、「高山植物という植物がない」のと同様だそうだ。マングローブは海水の中でも生きていける木の総称。一見すると、普通の木に見える。しかし、ここの植物はそれぞれに独自の工夫をして、海水の中で生き残る術を身につけている。

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たとえば、葉っぱの表面に塩を出している木がある。なめると上品な塩味。お酒が好きな人なら、この葉っぱをなめながらお酒を飲みたいと思うだろうというくらいのおいしさ。

鍾乳洞でコウモリを見学してから、いよいよカヤックで漕ぎ出す。川だが、水は海水。二人のりのカヤック。私はルームメイトになった野鳥愛好家の女性とペアを組む。初体験ながら、意外にすんなりとカヌーは前へ進んでくれた。大自然の中で、自分の力で自分のペースで動けるのは最高だ。疲れたら休む。景色に見とれたいときは見とれる。

途中、モーターボートで欧米人らしき一団が通りすぎる。

「どこから来たの?」
「もちろん、ロシアさ」

モチロンという言葉がつくのはなぜなのかわからないが、ホテルのスタッフの話だと、ここには相当にリッチなロシア人のお客が多いそうだ。ホテルの高級バンガローを借り切っての滞在に豪華パーティ。惜しむことなくお金を落としていってくれる彼らは、大事なお客様らしい。

ワシやトビなど、大きめの鳥が水面に降りてくる。
「旅行者のために餌付けしてるんです」
そのために、生態系が壊れてしまっている。こんな自然の中で、鳥が降りてきてサービスしてくれなくても十分に楽しめると思うのだけれど、そう思わない人も多いのだろうか。

カヤックツアーを楽しんだ後、熱い紅茶とお菓子のサービスがある。カヤックに乗ったまま頂く。紅茶はミルクと砂糖がたっぷりはいっておいしい。いい気分。温かな気配りが嬉しい。日没は7時半くらい。暮れかかる前に、エンジンつきの漁船に乗り換える。

景色のよいところで、尾島さんがニコニコしながら言う。
「さあ、飛び込んで」
思い切って飛び込む。水は温かく、風邪気味だということも忘れてしまう。しばらく浮かんだまま、一番星を眺める。

尾島さんが「ここでは、広角レンズで見てください」とおっしゃる意味が、ほんの少しだけわかりかけてきた。本当は私の視野はもっと広かったはずなのだ。なんと小さなところばかりを見ていたことだろう。周り中がマングローブの森と水と空。そんな中では、今まで見えなかったことが見えてくるような気がする。

それから、お食事。マレーシア版肝っ玉母さんのような方が作ってくださるという心づくしの食事が並ぶ。いずれもおいしい。つりたてのお魚や小さなイカをその場で焼いてくださったのを頂く。至福。

ちょうどこの日は満月。いつもは「天然プラネタリウム」を使って、ギリシア神話のお話などしてくださるそうだが、今日は満月なので、「月の出」を見る。

東京と違って、月がまぶしい。山の端に隠れて見えないときから、月の存在を感じるのである。そして、少しずつ月が姿を現してくる。

神々しい。

貧弱な語彙力では表現できないのがもどかしいような、この世のものとは思えない美しさ。銀色の光の中に、大きなまんまるい月が輝く。

言葉もなく見とれる私たちを、尾島さんはとても嬉しそうに見ていた。この島に来た人たちに、感動的な体験をしてもらうのが、この人の何にも代えがたい喜びであるらしい。

けれど、尾島さんは「エコツアー」という言葉を使いたがらない。旅行者が入ることで、自然が壊れていくことがあることをよく知っておられるからだ。この10年間だけを見ても、ずいぶんとこの島は変わったらしい。

楽しい時間はあっという間に過ぎて、月明かりの中、また船に乗って戻る。

「水に手を入れてみてください」
尾島さんの声で、皆が、それぞれ手を入れる。たちまち歓声が起こる。手を動かしたところに、たくさんの光の点がきらきらと光るのである。何度も何度も手をいれてみる。その現象は何度でも繰り返し起こる。夜光虫のようなものが水中にいるらしい。

魂のお洗濯をするには、格好の場所。リピーターが多いというのもわかる。七月には、ランカウイのファンが千人単位で集まって、渋谷でカヤックをテーマにした舞台を中心としたイベントをするらしい。

満月の夜、ランカウイにいることができた幸運に感謝。
月が手招きをしているようにも見えた。

Let's go to the moon!!


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ランカウイの虹

エコツアーに参加のため、マレーシアのランカウイ島へ。
以前、コスタリカでのエコツアーに参加したことがある。そのときは、海岸にはられた小さなテント(それがホテル)で寝起きをして、毎日波の音を聞きながら眠り、森を歩き、すばらしい体験をすることができた。

その経験から、マレーシアでエコツアーというお誘いをいただいて、参加することにした。今回は、企業で環境担当をしておられる方々が中心のツアーで、CSR研究所の足立直樹さんがツアーリーダー。元は生態系の研究者だったという足立さんは、マレーシアで3年間の研究実績もあり、言葉も堪能。

お誘いくださった方を除いて、私はツアーメンバーのどなたも存じ上げていない。環境活動家の中には、宇宙に対して冷ややかな視線を持つ方もいらっしゃる。ちょっと不安を感じつつ参加。
出発が14日の土曜日。偶然、読売新聞の「顔」欄に取り上げていただいていた日だったので、駅で購入した新聞をお見せした。短い字数の中に、宇宙と私の関わりやUNISECの活動を盛り込んでくださったおかげで、自己紹介は不要になった。皆さん、とてもいい方ばかりでほっとする。取材して記事をまとめてくださった知野記者に感謝。
horizon

クアラルンプールで乗り換えてランカウイへ。雨が降っていたのが、だんだんに晴れてきて、虹が出てきた。虹のトンネルをくぐっているような錯覚をしばし楽しむ。

美しい自然に快適なホテル。東京の寒さがうそのように暖かい。こんな形での旅はいったい何年ぶりだろう。

到着後、街で遅い夕食をとる。マレー風中華料理という感じだろうか。口に合いすぎるくらい、合う。楽しい旅になりそうな予感を抱きつつ、フカフカのベッドで眠りにつく。


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親離れする衛星

18日には、いよいよ網展開実験を内之浦で行う。宇宙研のS310というロケットを使用し、宇宙空間で網を開き、通信実験を行い、しかもその網の上をロボットが這うという、手の込んだ実験である。

東大チームが網展開を担当。通信実験は神戸大。そして、ロボットはESAが作っている。東大チームのプロマネは佐原さん。明日、準備のために出発する彼は、そわそわと落ち着かない。

「絶対ちびるよ」
といいながら悲壮感はなくて、なんだか嬉しそう。
実験はわずか4分。そのうち30秒で成否が決まる。その瞬間を想像するだけで「ちびりそう」になるのだ。聞いている私も心臓がバクバクいってくる。

網展開機構は、網がからまらないような工夫を相当に時間をかけて行った。そして、親衛星と3機の子衛星を製作。親衛星を中心に3機の子衛星が広がりながら三角形に網を展開する仕掛け。

これらの衛星の名前がふるっている。親衛星はMOTで、子衛星はDAUだという。motherとdaughter の最初の三文字をとっただけ。そして、3機の子衛星は、またシンプルな名前をつけられている。Tちゃん、Lちゃん、Rちゃん。Tが姉でLとRは双子の妹。これはTop, Left, Rightの略だそうで、わかりやすいといえば確かにそうだけれど。

Tちゃんはカメラを持っていて、撮影できる。LちゃんとRちゃんはスラスターを持っていて、移動できる。そうしてみんなでMOTママから親離れする。親離れしても、携帯電話(ブルトゥースというものを使うらしい)でちゃんと連絡をとりあうのが大事で、そうしてこそミッション完遂が可能になる。それが本当の親離れ。人間世界の親離れもかくありたい。

陽気にふるまいながら、佐原さんは、実は父性本能が出てきて、せつないらしい。この一年ほど、娘衛星たちを手塩にかけて育ててきたので、別れはつらい。MOTママこと親衛星は子離れができそうだが、佐原パパは、子離れが難しいらしい。これらの衛星と網はどこか遠い海に落ちる予定で、まず回収は不可能。

「海の底で魚の遊び場になるかなあ」
ロマンチックなことを考える父は、しかし、贈る言葉には月並みな文句しか浮かばない。

「がんばっていってらっしゃい」
これが佐原パパの贈る言葉。

神戸大の通信実験はまた、かなり野心的。4つの衛星の底に平板アンテナをつけて、フェイズドアレイアンテナ方式で位相を少しずつ変えてマイクロ波を送り、リトロ・ディレクティブ方式という方式で位相を合わせるのだそうだ。

ホンモノのロケットの打ち上げを間近で見ながら、自分たちが作った衛星の実験を行う。それがどれほど幸せで恵まれていることなのかは、ほんの少し前の卒業生に聞けばわかる。

私は、その間、マレーシアに調査旅行。
遠くから、親離れ・子離れが円満にいくことを祈ろう。

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ピギーバック宣言

JAXAの理事長が、宇宙開発委員会の席上で、2,3年後には、H-IIAロケットを使って、「ピギーバック」を毎年提供するようにしたい、とおっしゃられたそうだ。これはまた聞きなので、正確にどのように話されたのかは不明だが、トップが正式な場所でこのように「宣言」されたのは、初めてではないかと思う。

ロシアのロケットでの打ち上げは全く悪くないのだが、やはり日本で日本語でできるなら、そのほうがいい。輸出の手続きも不要になるし、近いのでコストも時間も節約できる。打ち上げの見物も可能だ。(ロシアは、軍事基地なので見物はまず不可能)

打ち上げが決まると、学生さんたちの目の色はかわる。動きは俊敏になり、口数は少なくなり、集中度が増す。日本のあちこちの大学でそういう光景が見られるのはすばらしい。

2,3年後というと、2008年か2009年。
定期的に打ち上げられるとすれば、その後、毎年打ち上げ機会があるということになる。もし本当なら、これは画期的な変化だ。

変化を起こす人、変革を決断する人は、いつも未来にリスクを負っている。後の世の人に、「あの人のおかげでこうなった」と言われるか、「あの人のせいでこうなった」と言われるかは、変化の最中には判断がつきにくい。判断がつかなくても、内なる心の声を頼りに決断はしなければならない。

理事長の心の声がどうだったのかは知る由もないが、ともかくH-IIAピギーバックは「GO!」という方向で決断されたらしい。関係者の皆さんのがんばりがきいたのだろうか。

打上げてもらう衛星作りにもますます熱が入っていくことだろう。そして、その衛星を使って何かをしようという人たちもますます増えていくことだろう。

その先にある世界はどんなだろう。想像するだけで楽しい。


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カムイ、高度10キロに挑む

カムイロケットは、その後、着々と進化を遂げ、この3月には高度10キロに挑む。3月18日早朝の予定。

10キロというのは、水平方向にすると、なんということもない距離。歩いて歩けない距離ではない。スペースシップワンは高度100キロまで軽々といっているし、宇宙ステーションは400キロ。静止軌道だったら36000キロ。10キロ程度でそれほど大騒ぎすることもないと思うかもしれない。

しかし、この狭い日本で、高度10キロまで打ち上げるというのは、なかなか大変である。あらぬ方向へ行ってしまった場合を想定して、危険がないようにしなければならない。ロケットが落ちる可能性のあるところに、人や車や家などがあってはいけないので、場所が限られる。国の射場である種子島や内之浦でも海に向かって打つ。

北海道は広いとはいっても、10キロ四方に何もない場所があるかというと、やはり難しい。3月の大樹町の打ち上げでも、真上ではなくて、海に向けて打つことになる。そうすると、海に落ちる。その間、船が海にいると危ないので、船も出ていない状態にしないといけない。漁業関係者の協力が必要になってくる。日本の宇宙開発には漁業交渉が必要なゆえんである。

しかし、北の海の男たちはきっぷがいい。
理解を示してくれたばかりでなく、燃料代程度のお礼で、ロケット回収のために船を出してくれるのだという。

そんなのは一度きりだという人がいるけれど、何事も本当は一度きりなのだ。2回目もあったら、それはすばらしいことだし、3回目があったりしたら、すごいことだ。お金のためでなく、10年とか100年とか続いていることがあったとしたら、もうそれは奇跡的なことで、関係者は誇りに思っていい。

カムイロケットの生みの親である永田先生は、アサヒスーパードライのCMに出演されるそうだ。インタビュー形式のそのCMは、この週末からオンエアの予定。

「メディアギャラリー」→「メディアギャラリー」→「Radio-CM」と辿ると、詳細情報が出てくる。今日の時点ではまだアップされていないようであるが、オンエア予定は以下のとおり。

●JWAVE 土曜日 15:00-16:30
ASAHI SUPER DRY SUPER LINE ‘J’

●エフエム名古屋 土曜日 17:15-18:00
ASAHI SUPER DRY SUPER AXIS

●FM802 土曜日 18:00-18:45
ASAHI SUPER DRY presents SUPER LIVE NETWORK

●FM東京 日曜日15:00-15:55
ASAHI SUPER DRY MUSIC ALIVE

●FMサウンド千葉 日曜日 17:00-17:55
ASAHI SUPER DRY SUPER BEAT STUDIUM

●FM Northwave 日曜日 17:00-18:00
ASAHI SUPER DRY BEAT ON THE EDGE


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新年のご挨拶

今年は飛躍の年にしたいと思い、「体脂肪計つきの体重計」を購入。
こういう単純明快な発想が未来を切り開くのではないかと、一人でうなずく。

飛躍するには軽いほうがよいだろう
  ↓
軽量化が必要であろう
  ↓
体重計を買おう

新年早々アホなことをいうのはやめにして、年賀状の文面を転載。

素敵なことがたくさん起こる年になりますように。
感謝や愛や温かな気持ちが地球に満ち満ちていきますように。
前向きで建設的な違いを起こしていけますように。


==年賀状==

謹賀新年

昨年は大変お世話になり、ありがとうございました。
大学生の宇宙開発に関わって4年。
多くの方に助けていただき、なんとか活動を続けてこられました。昨年は、彼らの活躍を描いた「キューブサット物語」を上梓することができました。

たくさんのすばらしい出会いとご縁に導かれて歩いてまいりましたが、今年は、なおいっそう精進を重ね、「宇宙からの視点」を持ち、より多くの方々の幸せに寄与できるようなことができればと念じています。

今年もどうぞよろしくお願いいたします。
すばらしい年になるようにお祈りしております。

==ここまで==

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