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ランカウイの満月

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1月15日。カヤックでマングローブの森をめぐる。ツアーは、尾島圭吾さんがガイド役。20歳のときにここに来てから11年という彼は、日焼けした顔に大きな目が印象的。一所懸命に人生を生きている人の目はきらきら輝いている。

マングローブという植物はないそうだ。それは、「高山植物という植物がない」のと同様だそうだ。マングローブは海水の中でも生きていける木の総称。一見すると、普通の木に見える。しかし、ここの植物はそれぞれに独自の工夫をして、海水の中で生き残る術を身につけている。

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たとえば、葉っぱの表面に塩を出している木がある。なめると上品な塩味。お酒が好きな人なら、この葉っぱをなめながらお酒を飲みたいと思うだろうというくらいのおいしさ。

鍾乳洞でコウモリを見学してから、いよいよカヤックで漕ぎ出す。川だが、水は海水。二人のりのカヤック。私はルームメイトになった野鳥愛好家の女性とペアを組む。初体験ながら、意外にすんなりとカヌーは前へ進んでくれた。大自然の中で、自分の力で自分のペースで動けるのは最高だ。疲れたら休む。景色に見とれたいときは見とれる。

途中、モーターボートで欧米人らしき一団が通りすぎる。

「どこから来たの?」
「もちろん、ロシアさ」

モチロンという言葉がつくのはなぜなのかわからないが、ホテルのスタッフの話だと、ここには相当にリッチなロシア人のお客が多いそうだ。ホテルの高級バンガローを借り切っての滞在に豪華パーティ。惜しむことなくお金を落としていってくれる彼らは、大事なお客様らしい。

ワシやトビなど、大きめの鳥が水面に降りてくる。
「旅行者のために餌付けしてるんです」
そのために、生態系が壊れてしまっている。こんな自然の中で、鳥が降りてきてサービスしてくれなくても十分に楽しめると思うのだけれど、そう思わない人も多いのだろうか。

カヤックツアーを楽しんだ後、熱い紅茶とお菓子のサービスがある。カヤックに乗ったまま頂く。紅茶はミルクと砂糖がたっぷりはいっておいしい。いい気分。温かな気配りが嬉しい。日没は7時半くらい。暮れかかる前に、エンジンつきの漁船に乗り換える。

景色のよいところで、尾島さんがニコニコしながら言う。
「さあ、飛び込んで」
思い切って飛び込む。水は温かく、風邪気味だということも忘れてしまう。しばらく浮かんだまま、一番星を眺める。

尾島さんが「ここでは、広角レンズで見てください」とおっしゃる意味が、ほんの少しだけわかりかけてきた。本当は私の視野はもっと広かったはずなのだ。なんと小さなところばかりを見ていたことだろう。周り中がマングローブの森と水と空。そんな中では、今まで見えなかったことが見えてくるような気がする。

それから、お食事。マレーシア版肝っ玉母さんのような方が作ってくださるという心づくしの食事が並ぶ。いずれもおいしい。つりたてのお魚や小さなイカをその場で焼いてくださったのを頂く。至福。

ちょうどこの日は満月。いつもは「天然プラネタリウム」を使って、ギリシア神話のお話などしてくださるそうだが、今日は満月なので、「月の出」を見る。

東京と違って、月がまぶしい。山の端に隠れて見えないときから、月の存在を感じるのである。そして、少しずつ月が姿を現してくる。

神々しい。

貧弱な語彙力では表現できないのがもどかしいような、この世のものとは思えない美しさ。銀色の光の中に、大きなまんまるい月が輝く。

言葉もなく見とれる私たちを、尾島さんはとても嬉しそうに見ていた。この島に来た人たちに、感動的な体験をしてもらうのが、この人の何にも代えがたい喜びであるらしい。

けれど、尾島さんは「エコツアー」という言葉を使いたがらない。旅行者が入ることで、自然が壊れていくことがあることをよく知っておられるからだ。この10年間だけを見ても、ずいぶんとこの島は変わったらしい。

楽しい時間はあっという間に過ぎて、月明かりの中、また船に乗って戻る。

「水に手を入れてみてください」
尾島さんの声で、皆が、それぞれ手を入れる。たちまち歓声が起こる。手を動かしたところに、たくさんの光の点がきらきらと光るのである。何度も何度も手をいれてみる。その現象は何度でも繰り返し起こる。夜光虫のようなものが水中にいるらしい。

魂のお洗濯をするには、格好の場所。リピーターが多いというのもわかる。七月には、ランカウイのファンが千人単位で集まって、渋谷でカヤックをテーマにした舞台を中心としたイベントをするらしい。

満月の夜、ランカウイにいることができた幸運に感謝。
月が手招きをしているようにも見えた。

Let's go to the moon!!


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