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親離れする衛星

18日には、いよいよ網展開実験を内之浦で行う。宇宙研のS310というロケットを使用し、宇宙空間で網を開き、通信実験を行い、しかもその網の上をロボットが這うという、手の込んだ実験である。

東大チームが網展開を担当。通信実験は神戸大。そして、ロボットはESAが作っている。東大チームのプロマネは佐原さん。明日、準備のために出発する彼は、そわそわと落ち着かない。

「絶対ちびるよ」
といいながら悲壮感はなくて、なんだか嬉しそう。
実験はわずか4分。そのうち30秒で成否が決まる。その瞬間を想像するだけで「ちびりそう」になるのだ。聞いている私も心臓がバクバクいってくる。

網展開機構は、網がからまらないような工夫を相当に時間をかけて行った。そして、親衛星と3機の子衛星を製作。親衛星を中心に3機の子衛星が広がりながら三角形に網を展開する仕掛け。

これらの衛星の名前がふるっている。親衛星はMOTで、子衛星はDAUだという。motherとdaughter の最初の三文字をとっただけ。そして、3機の子衛星は、またシンプルな名前をつけられている。Tちゃん、Lちゃん、Rちゃん。Tが姉でLとRは双子の妹。これはTop, Left, Rightの略だそうで、わかりやすいといえば確かにそうだけれど。

Tちゃんはカメラを持っていて、撮影できる。LちゃんとRちゃんはスラスターを持っていて、移動できる。そうしてみんなでMOTママから親離れする。親離れしても、携帯電話(ブルトゥースというものを使うらしい)でちゃんと連絡をとりあうのが大事で、そうしてこそミッション完遂が可能になる。それが本当の親離れ。人間世界の親離れもかくありたい。

陽気にふるまいながら、佐原さんは、実は父性本能が出てきて、せつないらしい。この一年ほど、娘衛星たちを手塩にかけて育ててきたので、別れはつらい。MOTママこと親衛星は子離れができそうだが、佐原パパは、子離れが難しいらしい。これらの衛星と網はどこか遠い海に落ちる予定で、まず回収は不可能。

「海の底で魚の遊び場になるかなあ」
ロマンチックなことを考える父は、しかし、贈る言葉には月並みな文句しか浮かばない。

「がんばっていってらっしゃい」
これが佐原パパの贈る言葉。

神戸大の通信実験はまた、かなり野心的。4つの衛星の底に平板アンテナをつけて、フェイズドアレイアンテナ方式で位相を少しずつ変えてマイクロ波を送り、リトロ・ディレクティブ方式という方式で位相を合わせるのだそうだ。

ホンモノのロケットの打ち上げを間近で見ながら、自分たちが作った衛星の実験を行う。それがどれほど幸せで恵まれていることなのかは、ほんの少し前の卒業生に聞けばわかる。

私は、その間、マレーシアに調査旅行。
遠くから、親離れ・子離れが円満にいくことを祈ろう。

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