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日大衛星SEEDS

東工大の衛星が無事にあがって、運用が始まっている。東大の衛星も昨年10月にあがって、運用中である。いずれも、二機目の衛星である。

UNISECには30大学も加盟しているのに、東大と東工大しか衛星を打ち上げられないのだろうか。

もちろん、そんなことはない。北海道でも九州などでも開発中だし、本当なら、日大の衛星は、1年以上前に打ちあがっているはずだった。

日大のキューブサットSEEDSは、とっくにできあがっていて、もうシップメントも完了している。ロシアのロケットのピギーバックであげることになっているのだが、そのメイン衛星(ロケット会社にとっては、メインのお客様)の完成が大幅に遅れているらしい。昨秋には、「来年度の上四半期に打ち上げ」といっていたが、2月も終わろうとしているのに、いまだにはっきりとした日にちがわからない状況である。

こういうとき、日本の打ち上げだったら状況の把握がすぐにできたり、いろいろ融通したりできてよいのだが、日本ではなかなか打ち上げスロットがもらえない。

宇宙作家クラブ取材班の取材(No1031)が本当なら、悲しいことだ。今回、東工大の衛星をJAXAのMVロケットに載せていただいたのだが、それに反対していた方たちがJAXA内にいらっしゃるという。優秀で経験のある方たちが反対されるには、何かちゃんとした理由があるに違いない。どんな懸念がおありだったのだろう。

学生衛星を作って打上げるということは、学生たちがメリットを享受するだけでなく、いろいろな意味で未来につながっていくと思うのは、ただの浅はかな思い込みなのだろうか。

大学衛星プロジェクトの大きな壁は、やはり打ち上げ手段の確保である。優秀なJAXAの技術者の方々が、H-IIAのピギーバックに反対されるとすれば、やはりそこにはそれなりの理由があるはずなので、本当に難しいのかもしれない。

とすれば、カムイロケットが急速に進化して、ポンポンと宇宙まで衛星を運んでくれるようになるのを願うほうがよいのかもしれない。

SEEDSを開発した学生たちは、次々に卒業してしまう。できれば卒業前に、感激のFirst AOSを経験して、自分たちの手で運用できたほうがいいに決まっている。

自分たちの衛星用に作った地上局で、他の大学の衛星の電波ばかりをとっている学生さんたちの心中を考えると、どこぞの国の衛星が早く完成して、一日も早く、SEEDSが宇宙へ行けることを祈りたい。


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CW受信成功!

Cute-1.7 + APDからの電波は九州大学でも受信できたそうだ。

(*注:あとでもらったメールによると、CWを受信できていたかどうかは微妙とのこと。夕方5時過ぎのパスに期待しよう)

以下、東工大尾曲さんのUNISECメーリングリストへの投稿を
またまた無断転載。
(*注:さきほど、ご本人の了解を得ました。無断転載は基本的に不可ですね)

(UNISECメーリングリストに入りたい方は、ぜひ会員になってください。
WEB会員なら無料です。ただし、実名登録に限らせていただいています。
お申し込みはUNISECホームページをご参照ください)

===ここから===

Cute-1.7 + APDは鹿児島より打ち上げられ,正常に起動したことを
確認いたしました.

アメリカ上空通過中にジョージア工科大学での受信に成功しました.
同時刻に,アメリカのアマチュア無線家より複数の受信報告を
受けています.

また,午前8時ごろ,中国上空を通過中に,九州大学地上局が
2分間のパスの受信に成功したとの連絡を頂きました.

衛星の軌道投入に成功したことを確認しましたので,ご報告します.


                          2006年2月22日
            東京工業大学Cute-1.7 + APDプロジェクトチーム

東京工業大学の小型衛星「Cute-1.7 + APD」よりのデータ受信成功(速報)

東京工業大学Cute-1.7 + APDプロジェクトチームは,
超小型衛星「Cute-1.7 + APD」を開発してまいりましたが,
平成18年2月22日午前7時36分にRalph Wallio氏(WORPK)(アイオワ)による
同衛星からモールス信号によるデータ受信を確認しました.
また同時刻に,ジョージア工科大学でのモールス信号受信を確認しました.
これにより衛星の軌道投入が成功したことを確認いたしましたので,
ご報告申し上げます.


東京工業大学Cute-1.7 + APDホームページ
http://lss.mes.titech.ac.jp/ssp/cute1.7/

==ここまで==

これからがまた大変と思いますが、まずはおめでとうございます!

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打ち上げ成功

MVの打ち上げが成功し、アストロFの電波受信はもちろん、キュート1.7のCWも受信が確認された模様。

松永研のWEBブログで、最新情報がキャッチできる。アメリカのジョージア工科大学で受信が確認されたそうだ。ヨカッタヨカッタ。日本にくるのは3時半くらい。楕円軌道なので、ちょっと時間がかかるらしい。

日本でもちゃんと聞こえますように。

松永研のWEBログは、楽しい。
てるてる坊主の写真もかわいいが、「偉大な酒匂様」の写真もなかなか。このあとの情報も、続々とアップされることだろう。楽しみだ。

早起きは三文の得。
早く起きたおかげで、打ち上げライブはもちろん、女子フィギュアのショートプログラムも見ることができた。朝からいいものを見られて満足。

今日は全国的に暖かくなるらしい。
春はもうすぐ。

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打上げ延期

MVロケット打上げは雨で延期。
ぎりぎりになって延期が決まったようだ。徹夜でスタンバイしていたであろう皆さんのことを考えると、ちょっと胸が痛い。HIIAの延期につきあわないで、さっさと打ちあげておけばよかったのに、などと余計なことを考える。

明日、同じ時間に打ち上げられるとのこと。
2月22日。覚えやすくていい日取りかもしれない。

明日の朝こそは、早起きして打上げの瞬間を見よう。

今日は起きられなかった。それどころか、知恵熱が出て、午前中は起きられずじまい。私の辞書に「風邪の熱」はなく、出る熱はすべて「知恵熱」である。熱が出た後は、実にすっきりして、アタマが冴えわたる。

午後になって少し熱がひいたので、ノコノコ出勤。夜には来客の予定。せきが少しでるので、のど飴を大量に買い込み、お湯をがぶがぶと飲む。

ひとは風邪をひいて、体を整える。
野口晴哉(はるちか)先生のご著書「風邪の効用」によれば、そういうことらしいので、体が整いつつあることをありがたく嬉しく感じながら、今日はあったかくして早めに寝よう。

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東工大衛星、明日打ち上げ

明日2月21日、東工大の二機目のキューブサット、Cute1.7+APDが内之浦から打ち上げられる。打ち上げ予定時刻は午前6時28分だという。

Cute1.7は、キューブサット二個分の衛星。東工大理学部の河合研究室との共同ミッションで、「APD(Avalanche Photo Diode)センサモジュール」というものが搭載されているのだという。この装置によって、ガンマ線バーストの検出ができるらしい。

東工大の尾曲さんが、UNISECのメーリングリストに投稿したメールを、無断にて転載。

Cute-1.7 + APDの打上が明日に迫ってまいりました. 打ち上げは午前6時28分で,日本上空を最初に通過するのは 午後3時半ごろを予定しております.

今回もGSN参加グループが受信を待機しております.
3時半ごろのパスは最大仰角が3度ほどで,東工大局だけでは
受信できない可能性もありますので,ぜひ各校の協力を
お願いしたいと思います.
よろしくお願いいたします.

GSNとは、Ground Station Network の略で、各大学の地上局のネットワークである。ほかにも、アマチュア無線家の皆さんが、手ぐすねひいて受信準備をされていることと思う。「自助と互恵」という、当たり前なのに、なぜか現実離れして聞こえる言葉が、少しずつ見える形になっていっているようで嬉しい。

衛星開発をする人たちの一番の喜びの瞬間は、「First AOS(ファースト・アオス)」なのだという。最初に宇宙からの声をキャッチする瞬間だ。衛星の「産声」といってもいい。

アマチュア衛星用語小辞典によると、AOSとは、Acquisition of Signal の略で、「衛星が観測者の可視範囲に入ること。この時から衛星からの信号が聞こえ始める」のだそうだ。逆はLOS(Loss of Signal)。

First AOSは、明日の午後3時半の予定。角度が低すぎるので、この時間の受信は難しいかもしれないけれど、全身に鳥肌が立つような感激を味わう人がまた増えると思うと嬉しい。

もう、祈るだけ。私にできるのは、心をこめて祈るだけ。
どうぞどうぞ、無事に打ちあがって、ちゃんと動いてくれますように。

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根津くらぶの秘密

根津くらぶには秘密がある。普通の料理屋さんにはない何かがどうやらありそうなこの店の秘密とは何か。まだ通い始めて一年足らずの初心者には、その秘密にふれるチャンスはほとんどないのだが、ほんの一瞬だけ、ベールがちらりとめくれて、「秘密」が見え隠れするときがある。

そもそも、根津くらぶとは何か。
根津の住宅街。路地を入っていった薄暗いところに、その店はひっそりとある。「イチゲンさん、お断り」とはどこにも書いていないが、勇気を出さないと入れない雰囲気をそこはかとなくかもし出している。

謎めいたたたずまいを見せるその店は、知る人ぞ知る名店。しかも、週に三日、木・金・土しか営業していない。ほかの日は、料理教室として開放している。私はその料理教室「初級」の生徒。

ここの料理人兼オーナーは、やまだえつこ先生。先生も素敵なら、助手の方もとても美しい方。料理が好きなだけではつとまらないと思う仕事を笑顔でこなす。

月に一回のお稽古日には、おいしい料理がいただける。否、そのような料理を作る喜びを味わえる。本日は、いなりずしに茶碗蒸しに里芋ととりの炊き合わせ。和風サラダ。

里芋ととりの炊き合わせには、春菊もたっぷりはいって、色もきれいで栄養もありそう。仕上げにゆずを細かくきざんだものをはらりとかける。とりは治部煮(これがおいしい)にして、里芋は別に炊いて、春菊もゆがいてから、別にだしでさっと煮る。こんなに手間ひまをかけているのに、小鉢に盛られたほんの一品にしかならない。

「家だったら、絶対にこんなことしないわ。全部いっしょに煮ちゃうわ」という、生徒の声に先生はさらりと答える。

「三品できて、いいでしょう?」

確かに、それぞれを別のお皿に盛れば三品になる。一品で三品分学んだ気分。料理屋さんで頂くときには、こんなに手がかかっていることだけ、覚えておこう。

060216
料理を作る最中も楽しいけれど、できあがって、皆さんで頂く時間がまた楽しい。
里芋はちょっとぬるぬるしているので、うまくお箸でつかみにくい。さりとて、グサッとさして食べるのもあまり美しくない。

初級の生徒なので、遠慮なく初級の質問をする。
「先生、こういうとき、つきさして食べたらダメですよね」

「一本で手前側をつきさして、向こう側からははさむようにするといいのよ」

なるほど。相手からは、つきさしているようには見えない。

食器はどれもとてもおしゃれで、料理をぐっとおいしそうに見せる。どこにこんな食器があるのかしらというような食器のオンパレードだ。

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お茶を入れてくださった急須は、朱の塗りで、木の蓋。
「この蓋、すてきですね」と言ったところ、先生はくすくす笑いながら、
「それ、割れてしまったので、自分で作ったのよ」

このおしゃれ心というか、もったいない精神というか、ここに一つ秘密があるのかもしれないと思ったけれど、たぶんこれは表面的な理解だろう。氷山の一角を見て氷山を見たと思ってはいけない。

築地で仕入れたという「上マンゴー」(ドライマンゴー)を試食。ドライとは思えないしっとりとした食感。少し余分があるというので、お持ち帰り用に購入。本日のお土産用いなりずしとともに、帰宅。

最近、根津くらぶの隣の家が突然なくなり、更地になったところが売りに出されているらしい。「根津くらぶ別館」ができたら素敵なのにと思うけれど、とってもお高いのだそうだ。グルメのお金持ちで投資したい方がいれば、オススメである。


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オクラホマシティ

植松さんのアメリカ体験は初々しい。飛行機が大好きなわりには、飛行機に長時間乗るのはあまりお好きではなくて、これまで海外は避けておられたそうだ。

オクラホマシティ訪問の感想をシェアしていただいたので、ご本人の許可を得て、転載。

植松さんが米国(オクラホマシティ)で驚いたこと

===ここから===

(1)野菜がうまい。キュウリもキャベツもうまい。
よくよく聞くと、手入れなんか何もしないでふっとばして育てているらしい。形はいびつで虫食いもあるけど、消費者は気にしないそうです。日本の農業をダメにしているのは、消費者なんでしょうね。

(2)牛の足が長い。
馬かと思いました。だだっ広いところで、勝手に生きています。出産も勝手にやるそうです。まさにワイルド。無駄な付加価値を植え付けられない牛の美しさを見ました。北海道でも、牛の放牧にチャレンジした人がいますが、弱い牛は死ぬそうですが、強い牛はより強くなり、育てるコストも手間もほとんどかからないそうです。

(3)全米最大の競馬場がある。
競馬場、と聞いたとたんに、「けっ、オクラホマってやだな」と思いましたが、念のために、「どういう階層の人が競馬をするの?」と聞くと、チャックもすぐにピンと来たらしく、「オクラホマでは競馬にはお金を賭けてはいけない。」と言いました。「そんなんで、見に来る人いるの?」と聞くと、「F1やインデイカーレースと同じだよ。」と言いました。なるほど。美しくて迫力があるから好きな人がいるわけですね。ギャンブルの対象じゃなくても市場として成立するんです。カジノは法律で厳しく制限され、その免許はインディアンしか取れないそうです。いろんな制限を上手に駆使している感じがしました。

(4)家が安い。
0.5ヘクタールの土地付きで一軒家が350万円。これならいつでも買えますね。興味と興奮のために人生を変える人を支えるのは、このような暮らしに対する安心感なのかもしれません。
脅迫的に老後の心配をさせられている日本人は、来るかどうかもわからない老後のために、人生を束縛されているような気がします。
(老後まで貨幣価値が不変だと信じている人があまりにも多いのに驚きますね。)

(5)町が小さくて大きい。
ひとつのタウンはせいぜい40軒程度の一軒家で構成されています。それが、約500m位の間隔で、ぽつんぽつんと存在します。それぞれのタウンは、良い道路で接続されています。この道路を人間が横切るなんて状況は無いような構成です。タウンは、半円型の道路で構成されています。なんか変な感じでしたが、町の中に交差点があるとあぶないだろう?とのことです。交差点がありません。
それぞれの家には、家の2倍ほどの庭がついています。路上駐車なんてあり得ません。駐車場に車を入れるために道路でスイッチバックする車もありません。買い物は、ショッピングセンターが集中する地域まで出かけるか、宅配だそうです。自動車が無くても生きていけるそうです。なんか、北海道の町と比べると、悲しくなってきます。なんで北海道のまちづくりをする人達は、東京の町を作ろうとしたんでしょうね。

(6)大規模構造物の基本構造が共通。
無骨な飛行機のハンガーと、美しいオクラホマ空港の建物の、鉄骨部分がまったく同一の設計でした。徹底した共通化によるコストダウンがはかられているのに、美観はきちんと保たれています。よくよく見ると、外灯のデザインがどこもかしこもみんな同じだったり、無駄な「でざいん」が行われていないですね。


===ここまで===

初めてのときは、よいことばかりが見えるもの。ハネムーン効果の続く2-3ヶ月を過ぎたころから、現実が見えてくる。現実が見えたときにこそ、人の真価が問われ、大きく成長するチャンスがある。そう考えると、人生はいつも楽しめる。年を経て、こういうことが腑に落ちて、しみこむようにわかってくることは、なんともいえない喜びだ。

カムイロケットは、何度かのエンジン破裂を経て、少しずつ強くてたくましいロケットに成長しているらしい。関係者の不屈の挑戦者魂も、ますます強くたくましくなっているに違いない。


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手作り宇宙船

久しぶりに赤平の植松さんからメールを頂いた。オクラホマに行っておられたのだという。カムイロケットの契約がらみのことで、ロケットプレーン社を訪問されたそうだ。

難しいことはさておき、植松さんの感想。

「宇宙船って手作り出来るんだなあ・・・」

以下、植松さんのメールから引用。

ほとんどのパーツを手作りで作ってました。しかも、かなり能率的に。ロッキードやボーイングの技術者達が集まってきているのですが、彼らは、「興味深くて興奮できる」という理由で、このプロジェクトに参加しています。まちがっても「給与」や「老後の安定」のためではないですね。それぞれのエンジニアが、とても濃い趣味を持っていますし、プロジェクトマネージャーが自分自身で旋盤などの工作機械もオペレート出来るのも素晴らしいです。

アメリカで、「きわめて植松電機的」な開発の現場を目の当たりにした植松さんは、さらなる未来のビジョンを見つけてこられたようだ。

いままで、子ども達のために、「大人に夢を信じさせる」努力をしてきました。大人が夢を信じないと、その子ども達が夢を信じるわけがありません。また、夢を諦めた人達は、その判断が正当だったと自分自身に信じ込ませたいがために、他者の努力を否定します。そんな人に出会ったら、子どもの夢は簡単につぶされます。

「技術は、それ自体では意味がなく、使い方を知って初めて意味がある。宇宙開発も、それだけでは意味がない。なんのためにやるのか、を明確にしないといけない」という植松さんは、それができるような人材育成にも目を向けている。

給与のためでなく、自身の満足のために働くことが出来る社会を創り出すことが、いまの日本にとても大切なことのような気がします。

たった二日間の滞在だったというのだけれど、チャックさんとの英語での意思疎通もでき、オクラホマの農業やまちづくりや、都市計画に関しても、たくさんのことを学び、ヒントをつかんでこられたようだ。

3月には大樹町での打ち上げを控えて、開発には余念がないことだろう。


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水星の大気

惑星の中で、水星はマイナーな存在。内惑星なので、地球からはいつも太陽方向にあるから、夜空で見上げることもない。水星という星を見たことがあるかというと、そういえばない。華々しくとりあげられることの多い火星や木星に比べると、扱いはいつも地味。

そんな地味な星、水星に魅せられてしまった研究者がいる。正確にいえば、水星の大気の謎に挑戦しておられる。

吉川一朗さん。しばらく宇宙研にいらして、最近、東大の理学部に助教授として戻ってこられた。地球惑星科学がご専門。

水星は、地球大気のゆらぎがノイズとなって入ってしまうので、観測しにくいのだそうだ。地平線すれすれのときしか観測できないので、いわゆる星のまばたきがよけいにおきて、正確な観測がしにくい。

水星にも大気がある。その大気は、地球とは違って、ナトリウムやカリウムでできているのだという。息がしにくそうだとまず思い、いや、そもそも呼吸はできないのだと思いなおす。「大気」というと、地球の我々が呼吸できるものだと短絡的に考えてしまう自分の思い込みに苦笑。ナトリウムやカリウムでできている大気はいったいどんな感じなのだろうかと不思議に思うけれど、水星では大気はそういうものらしい。

なぜ、ナトリウムやカリウムの大気があるのか。この理由については、1982年からずっと論争が続いているという。太陽から熱せられて地中から出てきたのだとか、太陽風によるものだとか、隕石や流星が落ちて、それに含まれていたとか、諸説あるが、この25年の間、まだ決着がついていない。

水星の大気を宇宙から観測できれば、長年の論争にピリオドを打つことができるかもしれない。吉川さんはひそやかな野望を持って、計画を練っておられる。水星の大気が発する光を特殊なカメラを使って観測すれば、かなりのことがわかるそうだ。

物理学者というと、アインシュタインのようにスゴイ理論を考え出す人を想像しがちだけれど、この方は、手を動かして研究をするのを好むタイプらしい。だから、データが取れるような実験を切望しておられる。宇宙から水星を観測できさえすれば、25年間ものあいだ、はっきりしなかったことが解明できるかもしれないのだ。それで、忙しい毎日を縫って、水星に近づくための道を模索しておられる。

ベッピコロンボ(JAXAとESAの共同プロジェクト)は水星にいけるが、2013年打ち上げで2019年に水星に到着する予定だという。そんなに長く待てるだろうか。研究は競争だ。いってみれば、早いもの勝ちの世界。10年以上先の話であれば、外国の研究者に先を越されてしまうかもしれない。

宇宙は時間がかかるという常識を、人はいつから持つようになったのだろう。あの有人アポロ計画だって、10年でできたのに、無人の衛星を水星に飛ばして大気を観測するのに10年以上かかるというのは解せない。

なんとか、早く水星の謎を解き明かしていただきたいものだ。


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宇宙地震予報

土曜の午後は、宇宙作家クラブの例会へ。
場所は例によって、エクスナレッジの会議室をご好意で使わせていただいている。ここは、もともと建築関係の専門雑誌を出している出版社のせいか、会議室もなかなかおしゃれ。

本日の講師は、JAXAの児玉哲哉氏。宇宙エンジニア兼カーレーサーの彼は、サラサラの長い髪で颯爽と登場。先日打ち上げに成功したばかりの「だいち」の運用のことや、これまでの地球観測衛星の歴史など、お話いただいた。例によってオフレコ話が多いので、ここでは割愛。

「今ある技術で新たな地平を」、が持論。そのひとつの可能性として、地震観測衛星を提案されている。

地震電磁気観測衛星は、すでに海外では打ち上げが行われている。
2001年にKOMPASS(ロシア、地震による電離層擾乱の観測を目的)、2003年にQUAKESAT(アメリカのベンチャー会社、XI-IVやCute-1といっしょに打ちあがった)、2004年にDEMETER(フランス)、2004年にSich-1M(ロシアとウクライナ)。

フランスは地震がおこらない国だけれど、アメリカが研究していないことは研究するという風潮がある国のせいか、DEMETERの予算も通ったらしい。地震国である日本でデータの受信をしてはどうかという話もあったが、NASDAは断ってしまった。拒否の理由が不可解ということで、当時、文春の記事にもなったそうだ。当時の意思決定に関わった方のお話を直接うかがったわけではないので、何がどうだったのかはよくわからない。

宇宙からの地震予知研究は、もちろん、科研費の項目にないくらいのキワモノ。それをまじめに科学的に地道に研究している物理学者がいらっしゃる。児玉氏が、そのまたゲストとして連れてこられた。

東京学芸大学の先生で、鴨川仁さんとおっしゃる。見た目は二十歳そこそこに見える。ピンクのシャツに薄紫色のタイ。学生さんとあまり変わらないように見えるが、自分なりの信念を持って研究を続けておられる。

地震が起こると、空気を押し上げ、電離層のプラズマをゆするのだという。

宇宙からの観測により、震央も決定できるそうだ。この原理を応用して、地震予知に役立てることはできないだろうか。

そんな研究をしている方が台湾にもおられ、共同研究も進めている。

地震予知に使うのであれば、いつ、どこで、どのくらい(マグニチュード)の大きさの地震が起こるのかがわからなければならない。このマグニチュードの予測というのがはなはだ厄介で、地震学会の中でも「すべってみない(地震が起こらない)とわからない」というのが主流だそうである。しかし、鴨川さんは、大きな地震では大きな準備が必要だろうという立場をとって、予測をしようと研究しておられる。

GPSを使って、電離層をスナップショットのような形で観測することは地上からでも可能で、それをすると、地震の前に電子密度が減るのが観測できるのだという。台湾の劉先生の論文に詳しい。

20年以上前に、ISASが「ひのとり」という衛星をあげて、太陽フレアの観測をしたことがあるが、そのときに計測した電子密度や電子温度のデータを使って、宇宙研の先生方といっしょに相関関係を調べたりもしている。しかし、大きな地震の頻度自体がそれほどないこともあって、客観性をもった観測事実とは、まだ広くは受けいられてはいない。

「予測の研究は無駄になるかもしれないが、大事」と言い切る鴨川さん。

衛星は地表のデータを集めるのに効果的なのだそうだが、「一番大変なのは、データの解析」で、相関関係を見出すには、人手が必要で、つまりはコストがかかる。

それでもできるところからやっていこうとする鴨川さんは、千葉工大の鯨衛星二号にセンサーを載せてもらうことを検討していて、お金集めに奔走している。800万円ほど必要なのだそうだ。

「ゲリラ的かもしれないが、サイエンスでできることはやりたい」

宇宙天気予報をやっているところもあったけれど、宇宙地震予報もそのうちできるようになるのかもしれない。

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引力と斥力

2

ナノジャスミンの反省会。今日はもんじゃ焼きのお店へ。
今日も今日とて、途中から熟睡モードに入る方やら、静かに飲み続ける人やら、熱く語る人やら、まめまめしく世話を焼く人やら、いろいろであるけれど、とにかくみなさんよく召し上がる。

またたくまにお好み焼きをたいらげ、もんじゃ焼きに突入。そして、焼きそばに焼きうどんに焼き飯。あいまにししゃもを鉄板のすみで焼いていたりもする。明太子チーズのもんじゃ焼きが不思議なおいしさ。

1
Sさんには、毎回驚かされる。お酒が入ると正直モード全開になる楽しい性格の彼は、今回も、衝撃的な話をしてくださった。全員がちょっと後ずさり。ここではとても書くことはできないが、要するに、湯川秀樹博士の中間子の理論を人間関係で説明するとこうなる、という話。

ある距離を越えると、斥力は引力に変わる。陽子や中性子が中間子をやりとりするようになるからである。人間関係においては、その距離は50センチーメートルだというS氏。二体は危ない。三体であれば、一人が中間子になる。わかる人にはわかり、わからない人にはわからない、難しい物理のお話なので、このあたりでとめておこう。

ナノジャスミンの概念設計では、フレッシュな新人が健闘している。田中崇資さんと片岸秀明さん。まだ4年生だが、本日は姿勢制御と熱制御について検討会で発表。

姿勢制御の発表をしたのは片岸さん。ナノジャスミンプロジェクトで、星の位置を測定するためには、「年周視差」というものを計る必要があり、それには1ミリアークセックの精度が必要なのだそうだ。1ミリアークセックというのは、1度の3600分の1のそのまた1000分の1ということなのだが、それはいったいどのくらい小さい角度なのだろう。目にも見えないような精度を出せるものなのか。しかも、10秒のあいだに700ミリアークセックずれてもいけないらしい。そんなことが可能なのか。

空気抵抗、太陽輻射熱に加えて残留磁気など、姿勢を不安定にする要素はたくさんあり、どうやって解決したらいいのか、頭を抱える二人。

姿勢制御といえば、まず思いつくのがホイール。道工大の佐鳥研究室で開発していた小型のホイールに望みをかけて電話。佐鳥先生は、深夜の電話にも関わらず、快く対応してくださった。まだ精度の測定をしていないので擾乱量がどれくらいなのかわからない。ということは、望みの綱はまだ切れていない。

しかし、そもそも、そんな精密な角度をはかれるセンサーがあるのか。今、3つの案があって、検討中。CCDカメラで撮影した星のぼやけ具合によって測るというのが有力だそうだが、可能かどうかはまだわからない。

田中さんは、熱制御の担当。99.5度の角度をなす二つの方向を同時に観測すると、正しい方向を測定できているかどうかがわかるのだそうだ。カメラは一つで、鏡を向けて両方とれるそうだが、温度がかわると金属が微妙に伸び縮みする。そうすると、本当に99.5度の角度をなしているのかどうかも不確かになってしまう。それを解決するためにどうすればよいのか。シミュレーションではうまくいったけれど、現実の世界ではもっと別の要素が入り込むのは間違いない。

二人は、「こんなすごいプロジェクトの検討をさせてもらえるなんて、うれしい」といいながらも、
「ARLISS(で作ったカンサット)でさえ、思うとおりに動かなかった。頭の中でわかっていることだってできないのに、どうやればいいのかもわからないことが本当にできるんだろうか」と不安そう。

技術的なハードルを一つずつ検討していくと、いまのところ、すべてアウトなのだという。けれど、決して後ろ向きにならないところが素晴らしい。

「でも、まだ検討する余地はたくさんあります」という片岸さん。
「宇宙論に関わる大事なミッションだから、絶対に成功させたい」という田中さん。

田中さんは、もともと、物理系にいきたかったというくらい、天文には熱い想いをもっている。このプロジェクトがうまくいけば、宇宙で距離をはかるモノサシがより正確なものになり、遠くの銀河の距離がわかるようになるそうだ。そうしたら、これまでの宇宙論を覆すことになるかもしれないし、新たな発見があるかもしれない。

ミッションの核心に近づいていけば、「斥力が引力」になって、普通では起こりえない相互作用が起こって、技術的なハードルをクリアできる日もくるかもしれない。

(これらの芸術的写真は、ジャスミンプロジェクト専属(?)のカメラマン、小林氏撮影のもの。手とお好み焼きの躍動感がすばらしいですね。ちなみに、この手は私の手です)

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