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宇宙地震予報

土曜の午後は、宇宙作家クラブの例会へ。
場所は例によって、エクスナレッジの会議室をご好意で使わせていただいている。ここは、もともと建築関係の専門雑誌を出している出版社のせいか、会議室もなかなかおしゃれ。

本日の講師は、JAXAの児玉哲哉氏。宇宙エンジニア兼カーレーサーの彼は、サラサラの長い髪で颯爽と登場。先日打ち上げに成功したばかりの「だいち」の運用のことや、これまでの地球観測衛星の歴史など、お話いただいた。例によってオフレコ話が多いので、ここでは割愛。

「今ある技術で新たな地平を」、が持論。そのひとつの可能性として、地震観測衛星を提案されている。

地震電磁気観測衛星は、すでに海外では打ち上げが行われている。
2001年にKOMPASS(ロシア、地震による電離層擾乱の観測を目的)、2003年にQUAKESAT(アメリカのベンチャー会社、XI-IVやCute-1といっしょに打ちあがった)、2004年にDEMETER(フランス)、2004年にSich-1M(ロシアとウクライナ)。

フランスは地震がおこらない国だけれど、アメリカが研究していないことは研究するという風潮がある国のせいか、DEMETERの予算も通ったらしい。地震国である日本でデータの受信をしてはどうかという話もあったが、NASDAは断ってしまった。拒否の理由が不可解ということで、当時、文春の記事にもなったそうだ。当時の意思決定に関わった方のお話を直接うかがったわけではないので、何がどうだったのかはよくわからない。

宇宙からの地震予知研究は、もちろん、科研費の項目にないくらいのキワモノ。それをまじめに科学的に地道に研究している物理学者がいらっしゃる。児玉氏が、そのまたゲストとして連れてこられた。

東京学芸大学の先生で、鴨川仁さんとおっしゃる。見た目は二十歳そこそこに見える。ピンクのシャツに薄紫色のタイ。学生さんとあまり変わらないように見えるが、自分なりの信念を持って研究を続けておられる。

地震が起こると、空気を押し上げ、電離層のプラズマをゆするのだという。

宇宙からの観測により、震央も決定できるそうだ。この原理を応用して、地震予知に役立てることはできないだろうか。

そんな研究をしている方が台湾にもおられ、共同研究も進めている。

地震予知に使うのであれば、いつ、どこで、どのくらい(マグニチュード)の大きさの地震が起こるのかがわからなければならない。このマグニチュードの予測というのがはなはだ厄介で、地震学会の中でも「すべってみない(地震が起こらない)とわからない」というのが主流だそうである。しかし、鴨川さんは、大きな地震では大きな準備が必要だろうという立場をとって、予測をしようと研究しておられる。

GPSを使って、電離層をスナップショットのような形で観測することは地上からでも可能で、それをすると、地震の前に電子密度が減るのが観測できるのだという。台湾の劉先生の論文に詳しい。

20年以上前に、ISASが「ひのとり」という衛星をあげて、太陽フレアの観測をしたことがあるが、そのときに計測した電子密度や電子温度のデータを使って、宇宙研の先生方といっしょに相関関係を調べたりもしている。しかし、大きな地震の頻度自体がそれほどないこともあって、客観性をもった観測事実とは、まだ広くは受けいられてはいない。

「予測の研究は無駄になるかもしれないが、大事」と言い切る鴨川さん。

衛星は地表のデータを集めるのに効果的なのだそうだが、「一番大変なのは、データの解析」で、相関関係を見出すには、人手が必要で、つまりはコストがかかる。

それでもできるところからやっていこうとする鴨川さんは、千葉工大の鯨衛星二号にセンサーを載せてもらうことを検討していて、お金集めに奔走している。800万円ほど必要なのだそうだ。

「ゲリラ的かもしれないが、サイエンスでできることはやりたい」

宇宙天気予報をやっているところもあったけれど、宇宙地震予報もそのうちできるようになるのかもしれない。

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Comments

情報、どうもありがとうございます。また、何かございましたら、どうぞよろしくお願いいたします。

Posted by: Rei | 2006.02.28 at 10:22 PM

昨年の講演録ですが、ご参考まで。

地震予知研究の最前線と地震防災対策の盲点
東海大学海洋研究所地震予知研究センター長、教授 長尾年恭 氏

http://www.thr.mlit.go.jp/Bumon/B00097/K00360/87_benkyokai/benkyokai.htm

Posted by: kodama | 2006.02.28 at 05:48 PM

情報をありがとうございます。
電磁波で地震がわかるなんて、不思議ですね。京都にもそんな研究をしておられる先生がいらっしゃるんですね。

いろいろなことが解明されていって、もっと地球と宇宙のことがわかっていったらうれしいですね。また情報があったら教えてください。どうぞよろしくお願いいたします。

Posted by: Rei | 2006.02.08 at 12:04 PM

電波で地震というのは、昔から胡散臭くて、予算の通りにくい側面あり。
京都産業大学の筒井先生の話は面白いけど。この人は衛星で宇宙のプラズマを観測していたが、大学を替わってから地中にも目を向けたそうです。
http://www.ics.kyoto-su.ac.jp/official/tsutsui/tsutsuitop.htm
http://www3.kyoto-su.ac.jp/liaison/kenkyu/message14.html

Posted by: sionoiri | 2006.02.08 at 10:36 AM

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