水星の大気
惑星の中で、水星はマイナーな存在。内惑星なので、地球からはいつも太陽方向にあるから、夜空で見上げることもない。水星という星を見たことがあるかというと、そういえばない。華々しくとりあげられることの多い火星や木星に比べると、扱いはいつも地味。
そんな地味な星、水星に魅せられてしまった研究者がいる。正確にいえば、水星の大気の謎に挑戦しておられる。
吉川一朗さん。しばらく宇宙研にいらして、最近、東大の理学部に助教授として戻ってこられた。地球惑星科学がご専門。
水星は、地球大気のゆらぎがノイズとなって入ってしまうので、観測しにくいのだそうだ。地平線すれすれのときしか観測できないので、いわゆる星のまばたきがよけいにおきて、正確な観測がしにくい。
水星にも大気がある。その大気は、地球とは違って、ナトリウムやカリウムでできているのだという。息がしにくそうだとまず思い、いや、そもそも呼吸はできないのだと思いなおす。「大気」というと、地球の我々が呼吸できるものだと短絡的に考えてしまう自分の思い込みに苦笑。ナトリウムやカリウムでできている大気はいったいどんな感じなのだろうかと不思議に思うけれど、水星では大気はそういうものらしい。
なぜ、ナトリウムやカリウムの大気があるのか。この理由については、1982年からずっと論争が続いているという。太陽から熱せられて地中から出てきたのだとか、太陽風によるものだとか、隕石や流星が落ちて、それに含まれていたとか、諸説あるが、この25年の間、まだ決着がついていない。
水星の大気を宇宙から観測できれば、長年の論争にピリオドを打つことができるかもしれない。吉川さんはひそやかな野望を持って、計画を練っておられる。水星の大気が発する光を特殊なカメラを使って観測すれば、かなりのことがわかるそうだ。
物理学者というと、アインシュタインのようにスゴイ理論を考え出す人を想像しがちだけれど、この方は、手を動かして研究をするのを好むタイプらしい。だから、データが取れるような実験を切望しておられる。宇宙から水星を観測できさえすれば、25年間ものあいだ、はっきりしなかったことが解明できるかもしれないのだ。それで、忙しい毎日を縫って、水星に近づくための道を模索しておられる。
ベッピコロンボ(JAXAとESAの共同プロジェクト)は水星にいけるが、2013年打ち上げで2019年に水星に到着する予定だという。そんなに長く待てるだろうか。研究は競争だ。いってみれば、早いもの勝ちの世界。10年以上先の話であれば、外国の研究者に先を越されてしまうかもしれない。
宇宙は時間がかかるという常識を、人はいつから持つようになったのだろう。あの有人アポロ計画だって、10年でできたのに、無人の衛星を水星に飛ばして大気を観測するのに10年以上かかるというのは解せない。
なんとか、早く水星の謎を解き明かしていただきたいものだ。
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