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ロダンとカリエールとナスカ

久々に「文化」に触れようと思いたち、上野公園へ。
「ロダンとカリエール」展が、国立西洋美術館で開かれていた。たまには彫刻で目を喜ばせよう。お金を払わなくても、西洋美術館の入り口のところには、ロダンの芸術品がどーんとおかれている。こういうところは太っ腹でよろしい。

「考える人」で有名な彫刻家ロダンには、カリエールという画家の友人がいたのだという。互いに刺激を与え合い、影響しあい、互いの作品を大事に持っていたという二人は、彫刻と絵という表現方法は違っていても、似た魂を持っていたらしい。

持つべきものは、よき友だ。
友には利害関係がない。もしあるとしたら、それは友ではない。
利害関係がないとき、友は自分の鏡といってもいい。利害関係が生じると、鏡はたちどころに曇る。だからいけないというわけではなくて、曇ったら磨くことを知っていればいい。磨き続ける努力を惜しまないことで、鏡は本当の姿を映し出し続けてくれる。

カリエールの絵は、セピア色の肖像画や人物画が多い。鮮やかな色彩が好きな私には、やや物足りないような気がしていたのだが、見ているうちに色が浮かび上がってくるような気がするのが不思議だ。ちょうど、水墨画は白と黒だけなのに、見ていると色がふっと見え隠れする(ような気がする)のに似ている。カリエールは色彩豊かな絵で知られるマティスの師だったという。これも不思議。

そして、確かにロダンの彫刻とカリエールの絵は、なにやら似ているように見える。カリエールはロダンの肖像を描き、ロダンはカリエールのデスマスクを制作監督したのだという。

美術館でいつも考えること。
「ひとつ、好きな作品を持って帰ってよいといわれたら、どれを頂こうか?」
そんなことを言われることはありえないが、そう思って作品を見ると、いちいち真剣にしっかりと見ることを楽しめる。

今日の中では、ロダンの大理石の彫刻が素敵だった。タイトルは「復活」と書いてあった。
La Convalescente (The Convalescence) 

「復活」というような劇的な感じはなく、「ゆったりした回復期」とでも命名したいような、柔らかな作品だ。真っ白な大理石の中に浮かび上がるやさしい顔と手。見ているだけで、和やかな気持ちになるような作品。こんな彫刻が部屋にあったら、毎日が幸せだろうと思いながら、しばらくそのやさしい顔を見つめていた。

芸術作品は、鑑賞するより、「ともにいる」ほうがいい。好きな作品と「ともにいる」贅沢で大切な時間。意外にすいていたので、たっぷり楽しめた。

それから、常設展をぶらぶらと見て、帰ろうと思いきや、美術館の半券でナスカ展が割引、というポスターが目に入り、そのまま科学博物館へ。(200円割引だった)

ミイラや当時の食器類、織物類の展示。織物類は、インベーダーゲームにちょっと似た絵柄だが、すばらしい芸術品だ。よくぞ復元できたものだと思う。目玉は子供のミイラの展示。黒目があるなどと説明がある。こんな昔の子供が、そのまま残っているなんて、不思議でならない。

そもそも、ナスカの地上絵というのは、単に地表のゴロゴロとした石をよけて作っただけの道らしい。日本にいる私の感覚でいうと、そのようなことをしても、10年ももたずに道はなくなってしまうと思うのであるが、乾燥地帯では「ときの流れ」のスピードが違うのだろうか。

ナスカの地上絵を大スクリーンで体験できるというので、楽しみにしていった。確かにセスナで飛んでいる気分になるようで、なかなかの迫力だが、私は、こういうのを見てしまうと、ホンモノを自分の目で見たくなる困った性分なのである。うーんとうなりながら、帰宅。ナスカのツアーなど、ネットでつい調べてしまった。

誰が何のために作ったのか、という論議はつきないらしいけれど、今そこに、それが残っていて、現代の私たちが見ることができるということ自体、奇跡的だ。

ロダンとカリエールとナスカは何の関係もない。単に、私が同じ日に展覧会を見た、というだけのことである。しかし、あえて結びつけて考えてみると、「残す行為」の普遍性のようなものを感じずにはいられない。

ミイラとして残したい、デスマスクにして残したい、肖像画にして残したい、というのは、「何かを残したい」という気持ちであって、古今東西を問わず、人に備わっているものなのかもしれない。とすると、デジカメやビデオは、その欲望を満たす格好の製品といえる。普遍的な欲望をとらえる製品開発をすれば、売れるわけだ。とすると・・・・意外なところにヒントがありそうだ。


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Comments

akiaki様
コメント、ありがとうございます。私もこんなオチになるとは思いませんでした。しかし、人間は何千年ものあいだ、あまり進化していないのかもしれません。

It's time to change! かもしれませんね。楽しみですね。

Posted by: Rei | 2006.03.21 11:31 AM

しょ、商売っ気たっぷりなオチで思わずわらいました(笑)
この出だしから結論が此処とは。参った;

Posted by: akiaki | 2006.03.21 10:33 AM

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