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あかりちゃん誕生秘話

ナノジャスミンのPDRのあと、審査員数名とコーヒーを飲みながらおしゃべり。

あかりちゃんときらりちゃんの裏話を聞く。まずはあかりちゃんから。

<あかりちゃん誕生秘話>

あかりちゃんは、今年の2月22日に内之浦で生まれた。生まれる前には「ASTRO-F」あるいは IRIS(Infrared Imaging Surveyor)という難しい名前で呼ばれていた。700キロメートルの高さの軌道をぐるぐるまわりながら、望遠鏡で遠くの銀河を観測する。星の一生が追えるそうで、活躍が期待されている。

「(自称)あかりちゃんのパパ」こと松原英雄先生によれば、今年2月にあかりちゃんが生まれてから、心臓がきゅんとなるような心配事がたくさんあったのだという。

「あかりの目が見えないのがわかったときは、ショックでした」
(注:脚色あり)

あかりちゃんは、なぜか生まれたときから目が不自由だった。望遠鏡をどっちに向けるかを決めるのに、太陽がどっちにあるかがわからないといけないのだが、あかりちゃんにはわからない。太陽センサを積んでいるのだが、これがなぜか動かなかったのだそうだ。間違って太陽のほうに向けて望遠鏡の蓋をあけてしまったら、中を冷やすのに使っている液体ヘリウムがみんな飛んでいってしまうから、どうしても正しい方向を向かないといけない。

あかりちゃんには、万一に備えて、別の目もついていた。でも、本当は太陽センサは丈夫で長持ちのはずで、それがあればもっと楽にすぐに進めることができたはずだった。別の目は、星を見て位置がわかるスタートラッカー。これは、優秀だが繊細で、宇宙線にめっぽう弱い。しかし、なんとかそれを使って方向を決めることに成功。

今年の2月に生まれて、望遠鏡の蓋を開けたのが4月中旬。その間はずっと初期運用。初期運用というのは緊急運用と同じくらい大変。

蓋をとったら、その反動で衛星の姿勢が狂うから、狂わないように同時に噴射も行う。あかりちゃんは、その難しいパフォーマンスに見事に成功。蓋がとれて、900キロ以上あった体重はちょっと減って800キロ台に。

「蓋ですか?40キロくらいあってね。パーンと飛ばして、デブリ(宇宙ゴミ)作っちゃったんです。つけといて、また閉じたりしたら困るから」

あかりちゃんのパパは、粗大ゴミを宇宙に捨ててしまったことを、申し訳なさそうに言う。

なぜそんなごっつい蓋をつけていたのかといえば、観測装置を冷やすための巨大な魔法瓶に「あかり」の望遠鏡は入っているので、いわば「魔法瓶の蓋」が必要だったのである。

目が少し不自由というハンディを乗り越えて、あかりちゃんは、遠くの銀河の写真を撮ったりして、少しずつ成果をあげている。あかりちゃんのパパは、そんなあかりちゃんの能力をこれから存分に引き出していくつもりらしい。

ゴルフの世界では、さくらちゃんのパパはさくらちゃんのおかげでいい目を見ている。
宇宙の世界でも、娘のおかげでいい目を見せてもらうパパがたくさん出てくることを祈ろう。

がんばれ、あかりちゃん!

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