ベルリンその2
4月20日(金)
本日は、Astrofein社へと向かう。8時半の電車に乗ると、最寄駅にどなたかがお迎えにいらしてくださっているとのことで、指定の電車に乗る。なんとありがたいことよ。
ホテルから電車の駅までは少し歩く。ベルリンの街は、どこもかしこも工事中で改築中。この駅も、すぐそこに見えているのだが、道路が工事中なので、かなり遠回りをして到着。
ドイツ語はわからないので、やや緊張して電車に乗る。アルファベットなので、駅名は読めるから、ひとつずつ確認していく。なんとなく楽しい。
駅には、昨日の方とは別の方が迎えにいらしてくださって、そして会社まで歩く道すがら、いろいろ教えてくださる。
「今日は長い一日になるので、始まりの時間を少し遅く設定しました」
「遅い」といっても、9時5分には最初のミーティングが始まったのである。どうやら、本日は一日びっしりと予定が組まれている様子。
Astrofein社は、1993年設立。DLRから独立したエンジニアたちが作った会社。東西ドイツの統一により、旧東ドイツの宇宙機関the German Academy of Sciences は、the Berlin- Adlershof center of the German Aerospace Research Establishment (DLR)となった。DLRはサイエンス中心なので、エンジニアとしてはいまひとつだったので、起業することにしたとのこと。社長をはじめ、ほとんどが東ドイツ出身のエンジニア。
1994年には5人だった従業員が、2002年には25人になり、現在は52人。Adlershofというサイエンスパーク(450社くらいが集まっていて、DLRもそこにある)に会社はある。
ミーティングルームには、美しく飾られた果物とクッキーが。
こういうセンスは日本もほしいものだと思いながら、朝食バイキングで食べ過ぎているので、お茶だけを頂く。
ここの社長さんには、来日された折に一度お会いしたことがある。この方は、英語をあまり話されないので、通訳を介してお話する。
一日びっしりと施設の見学と、入れ替わり立ち代りの説明をうかがう。この会社は、Quality Assurance に配慮しており、多くのCertificateをもらっているらしい。
「顧客の標準が、我々の標準」がモットーだそうだ。
そして、超小型衛星用のホイールの実物を見せていただく。本当に小さい。
姿勢制御のシミュレーション設備を最近作ったそうだ。
BIRDの姿勢制御のシミュレーションをするときに作った設備をもとにして、姿勢制御に関するすべての試験が自動でできるようなものを作り上げたとのことだ。地下には、たくさんの精密加工機械があって、何でも自社で作れる。
うーん、こういう中小の会社がドイツにはいくつもあるのだとすると、けっこうな底力だ。
産業として成功するには、層の厚さが必要だ。
日本には、そういう層の厚さがあるだろうか。
たいへん残念ながら、日本の宇宙機器輸出高は減少の一途をたどっている。世界の市場は右肩上がりだというのに、そして、円がこれほど安くなっているというのに。
うーんとうなりつつ、夕方から市内観光に連れていっていただく。
ベルリンの壁はもうないのだが、記念のために、一部だけが残っている。意外に低くて、簡単に超えられそうに見える。当時は、その上に鉄条網がはりめぐらされていたし、決して超えられない壁になっていたのだろう。
壁はたぶん、まず人の心の中にできて、それが現実化しただけのこと。壁があると思うときには、まず自分から壁を壊すことが必要なのかもしれない。
壁があったことを忘れないために、道路には印がずっとつけられている。
あったことを「忘れない」ような努力がずいぶんとなされている。
なんでも水に流してしまいたがる日本とはずいぶんと違うように思える。どちらがいいのか、本当のところは、わからないけれど。
ユダヤ人虐殺の悲しい歴史も、忘れないように、モニュメントが作られている。
棺を思い起こさせる形のものが、たくさん並べてある。
忘れないように。
自分たちがしたことを、忘れないように。
それが、ごく日常の風景になっている。
何かを感じながら、おいしい料理とワインで、楽しい夜を過ごす。
Lutter und Wegener というレストラン。現代絵画が壁にかけられていて、美術館の中で食事をしている感じ。
すすめられるままに、イチゴの食前酒を注文。甘くておいしい。
巨大なわらじのごときシュニッツェルと、白いアスパラガスが絶品。
アスパラガスはシーズンだそうで、太くて長くて白くて、そしておいしい。
このディナーは、忘れない。
幸せな食事は、いつもどこでも心を満たしてくれるものらしい。
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Comments
ドイツ語が少しでもできたら、よかったのにと思いましたが、皆さんがドイツ語でお話しているときは、頭を休めていられるので、かえって楽でした。
(英語だと、ずっと緊張して聞いていないといけない。。。)
Posted by: Rei | 2007.05.10 01:11 AM
第2外国語はドイツ語でしたが、
遥か向こうの忘却の彼方です。
Posted by: Hiroshi Akatsuka | 2007.05.09 09:00 PM