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クラスターローンチ

打ち上げロケットを探している。
来年打ちあがる予定のH2Aのピギーバックに選ばれなかった衛星たち。光と影は、いつもどこでもあるらしい。

クラスターローンチ(いくつかの衛星をいっしょにして打上げること)にして、どこか海外のロケットであげてもらえればいい、などと甘く考えていた。

しかし、ロケットが見つからない。
見つからないというのは本当ではなく、見つかっているのだが、値段が折り合わないのである。

ちょうどよい時期に見つかったのはよいけれど、「60万ユーロ」っていくらだっけ。。。

電卓をたたいて、ゼロの数を数えてひっくり返る。

「い、一億円、、、」

宝くじでもあたらねば、とても打ち上げは無理。10個いっしょに打上げたとしても、キューブサット一個の打ち上げ費用だけで1千万円。大学の研究室で出せる額ではない。

最近、ロシアはたいそう強気で、値段をどんどんあげてきている。しかも円がこんなに弱いときている。

日本のロケットがもっと充実していれば、と思ってしまう。
日本語で作業ができて、輸出手続きをしなくていいというだけでも、日本の衛星を日本で打上げる価値は高い。何よりも、ノウハウがどんどんたまっていく。

衛星の鍵は、ロケットだ。
どんなに衛星をがんばって安く作っても、打ち上げ費でひっくり返ってしまう。

しかし、20もの大学が、衛星を打上げたいと切望しているのであるから、ここはなんとしてもロケットを探さねばなるまい。

というわけで、ロケットを探している。探せなければ打ち上げはない。打ち上げがなければ、作ったものはいつまでも衛星になれない。

さて、ここからは、議論の分かれるところだろう。某新聞の方にも電話でいろいろ聞かれたけれど、そのときにははっきりと言えなかった。

しかし、この状況にあっては、やはり大きな声で言おう。

2000億円もある宇宙予算のうち、0.1%くらい、大学生の宇宙開発支援に使ってもらえないものだろうか。たった0.1%の予算で、どれくらいすばらしいことができることだろう。

H2Aに載せていただけることになったのは、すばらしい。しかし、先日のパリのエアショーだけで30数本の受注があった(数字は又聞きなので、要確認)というアリアン(400億円もするのだが)などと違って、H2Aは打ち上げ自体が少ない。情報収集衛星には載せてもらえないから、次はいったいいつになるのかわからない。そうこうしているうちに、学生さんたちは卒業してしまう。

H2A搭載が可能であろうとなかろうと、1億円で打ち上げスロットを毎年確保したい。

MHI(H2Aの製作会社)が打上げてくれるのであれば、1億円をMHIに支払う。今後、GXが打ちあがるのであれば、GXに支払ってもよい。新しい固体ロケットがあるのであれば、そこに支払ってもいい。(安定打ち上げができるようになるまでは、リスクが大きいので無料にしていただきたいが)

それだけで、学生さんたちの頑張り具合がどれほど違うことか。
がんばれば打上げてもらえると思うだけで、どれほど力が入ることだろう。
そうして、打ち上げることに無上の喜びを感じる人が多く関わることで、ロケット開発側にも、どれほど目に見えない力を与えることか。

学生の宇宙開発は、試行錯誤が可能で、しかも手が多い。
大学ごとに違うやり方でやってみることが可能。
技術革新をどんどんやれる環境が、宇宙開発の世界にも必要だ。コストが高い世界なので、プロの世界ではなかなかやりにくいけれど、学生の世界ではどんどんやれる。

残りの1億円で、衛星開発やロケット開発ができるポスドククラスの優秀な人材を雇用し、彼らが思い切り仕事ができる場を創る。プロのエンジニアスタッフが10人いれば、相当なことができる。ここでは、ペーパーワークは極力少なくして、実際の開発作業にあたってもらう。彼らがプロマネになって、学生たちをひっぱっていけば、相当に大きなプロジェクトもできるだろう。

そんな世界が作れないものだろうか。

たった0.1%の投資で、人材は育ち(根性と実力のあるエンジニアになっているはず)、革新的な技術開発が安価にでき、宇宙開発に興味を持つ人たちが、指数関数的に増えていくのである。真剣に打ち込む家族や友人を見て、「何がそんなに嬉しいの」と思う人たちが増えていくのはまちがいない。自分の息子や娘や兄弟姉妹がやっていれば、ちょっと応援してやろうかという気にもなるだろう。

現在、UNISECの予算は、年間で1000万円程度。そのうち、宇宙予算から頂いているのは800万円程度。これで、400人以上いる学生さんたちの活動をサポートし、事務局を運営しているのである。人件費もそこから出しているのである。そして、驚くほどの成果をあげている。そのことは、誇ってよいことだけれど、いかんせん、打ち上げには費用がかかる。

みんなが手弁当でがんばってできるところと、そうでないところがある。

衛星の軌道投入に関しては、そうでない。学生さんたちがバイト代を集めても、1億円集めるのは難しいだろう。

宇宙予算の0.1%を、次世代の教育に使わせていただきたい。

夢を夢みるのでなく、夢を現実にすることを堅実にやっていける若い人たちを、社会はどれほど必要としていることか。そうやって育った人たちは、すぐに社会の中堅となって、世の中に貢献していくのである。

これほど費用対効果の高い投資を私は知らない。

こういったことを、誰に言えばよいのかわからないので、とりあえず、このブログに書いておく。

いつかこういう世界が出現したとき、ニヤリとする日を楽しみに、日々精進していこう。

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Comments

ご質問ありがとうございます。

キューブサットであれば、重さ1キロで10センチ角です。支払い可能な額は数百万円というところではないでしょうか。もちろん安ければ安いほうがよいには決まっていますが。

研究室によって事情は変わると思いますが、打ち上げ費用は、科研費に費目がないので使えない、NEDO等の助成金も制約があることが多く、別に調達しなければならないことがほとんどと聞いています。

Posted by: Rei kawashima | 2007.07.09 at 12:13 PM

はじめまして。

もし宜しければ、研究室の手が出るレベルの目安として
以下(X,Y,Z)を教えて頂けないでしょうか。

重さX(kg)、包絡域Y(m^3)の衛星をZ(万円)で打上げ

Posted by: ok | 2007.07.07 at 05:11 PM

秋山様
コメント、ありがとうございます。
ニヤリとするのは別人種。いやーたまりませんね。あまりにあたっていて、、、。

そうですねー、そういう世界が出現したら、別の悩みごとが出てくるんでしょうね。

しかし、ゴールは「お金をゲットする」とか「やりたいことをやる」というような小ざかしいところにあるのではないので、今をいつくしみつつ、楽しみつつ、ゆったりと歩いてまいりましょう。

Enjoy every single moment!


Posted by: Rei | 2007.07.04 at 03:55 PM

多分いつかそういう日が来たとき、ニヤリ(別の意味ですが;)とするのは、多分別の人種なんですよ。で、川島さんはまた別のところで”こーいう風にはならないものだろうか?”と苦労される日々を過ごされる(^_^;

お金の価値に関しては、日々悶々としますね、ホント。

Posted by: akiaki | 2007.07.04 at 03:19 PM

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