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甘えの構造とUNISEC

「甘えの構造」と「続・甘えの構造」を読んだ。
前者が書かれてから30年後に書かれたのが後者。

1950年代にアメリカへ行ってカルチャーショックを受けた精神科医、土居健郎氏が、「甘え」という日本語に特有の言葉に注目して、自身の研究と広くて深い読書と思索と思惟を経て書いたもの。

「甘え」とか「甘える」という言葉は、英語の語彙にはない。
ちょうど、プライバシーとかアイデンティティという言葉が日本語の語彙にないのと同じ。

国境はないとはいっても、住んでいるところによって、ものの考え方は大きく違う。
こんなに感性や考え方が違う人たちがいっしょに仕事をしたり、友達になったり、結婚したりしている現実に改めて驚く。

著者は、「甘え」は悪くはなく、信頼関係を作り、精神的に発達するために必要だという。しかしながら、大人になって、「甘えている」という自覚がないままにそうしているのは問題、とも言っている。

「健康な甘え」が否定されていったために、「病的な甘え」がはびこるようになったと著者は指摘する。
「病的な甘え」が「健康な甘え」を駆逐したのかもしれないのだが、そのあたりの因果関係は不明。

この本を読んだのは、別の必要性があってのことなのだが、UNISECの存在意義を最近考えていたところだった私に、大きなヒントになることがあった。

70年の安保闘争や当時の若者の体制への反抗について、筆者は以下のように洞察する。(『「甘え」の構造』229ページ)

大体青年が自らの力を過信するに至れば、彼らが攻撃している勢力者たちともはや区別がつかなくなるではないか。彼らが真に必要とするものは、それによって自らの限界を知ることができる力試しである。しかし、今日の社会で誰がその機会を青年に与えられるのであろうか。誰が彼らにとって父親となり、権威と秩序の意味を新たに説くことができるのであろうか。見渡したところ、大学教授にも、政治家にも、思想家にも、宗教家にもいない。この点で現代はまさに絶望的である。事実は一にぎりの青年たちだけがアナキーなのではなく、時代全体の精神がアナキーなのである。であるとすると現代の青年はいつ果てるともわからぬ力試しに、まだ当分は明け暮れせねばならぬのではなかろうか。

筆者は、桃太郎の寓話を例にとりながら、論を展開していくのであるが、安保闘争のころからすでに40年近くがたっており、現在の日本の状況は、「戦う相手、乗り越えるべき存在」に関する議論さえなくなった世界になったといえるかもしれない。

成長のためには、力試しの場、限界を知る場が必要。
UNISECや学生の宇宙プロジェクトが提供しうるのは、まさしく、そういう場ではないだろうか。

相手が必要なスポーツやゲームとは違い、自分たちがどれだけがんばったかによって、衛星もロケットも成否が決まる。相手を倒さなくとも、自分が勝つことはできる。全員が「勝つ=成功する」ことだって可能だ。その一方で、自分の努力とは無関係のところで、失敗も起こり、すべてが無に帰することもある。

それでいて、妙な平等主義とも違うのは、低きにあわせる必要はなく、できるところは、突出してすばらしい衛星やロケットを作ってもいいのだ。画期的なアイディアを出し、実現すれば、賞賛される。経験の少ないところは、自分たちなりのことをして、成果を出せば、それも賞賛される。

みんなで仲良くゴールインというのは、すべての人に欲求不満を起こさせるのではないかと、個人的に思っている。

UNISECの標準は、常に最高地点。「標準」は「平均」とは違う。
トップランナーがより早く走ることで、後続のランナーも早く走れるようになるのだ。そういう意味では、トップランナーの責任は重い。でも、トップランナーは、そんなことは気にせず、自分たちの信じることを、何のてらいもなく、どんどん実現していけばいい。

皆の手本になるような団体があちこちに林立している、という状態が理想的。
どんぐりの背比べでなく、多様な植物が育っている、という状況が続いていけば、熱帯雨林のような「やせた土地なのに信じられないほどの豊かな恵み」が自然循環していく。

そんなことを意識して活動していたわけではないのだが、超特急で成長していく学生さんたちの姿を見るにつけ、この場は、もしかするとそういう場として機能していたのではないか、と思ったりする。

名著というものは、分野を超えて、ヒントをくれるものらしい。
「甘えの構造」「続・甘えの構造」を読んで、いろいろなことを考えた。まだ整理がついていないけれど、確かに何かの手がかりを得たように思う。

ご一読をお勧めしたい。

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